嫉妬



「ずっと気になってたんだけどさ」

 巫女の日記の解読作業中、プルアがふと声を上げた。

「うん?」
「過去の勇者って、やっぱ今のリンクと似てたの?」
「う…んん。特徴は同じ、かな…?」

 過去の勇者。私の記憶の中の、今までのハイラルの勇者。プルアはどこか興味津々だ。

「金髪で、碧い瞳。…それくらいだけど…金髪といっても明るかったり暗かったり」
「じゃあがリンクを見つけた時、一発でわかった?」
「……退魔の剣を…持ってたから…」

 それもそうか、とプルアは質問を引っ込め、また別の問いを出す。

「退魔の剣を持ってなかったら、リンクを見つけられる自信てある?」
「………どう……だろう?……やっぱり、リンクの方が私を見つけてくれる…から」
「あーそうかぁ。ふひひ、いいねえ運命の人って感じ」
「突然どうしたの?」
「いやーちょっとラサムがね」

 その返答だけで大体は察せられた。
 解読作業を続けながら、世間話と少しの…のろけで、日は傾いていく。
 今日リンクはゼルダと共に塔の調査に赴いている。危険だからと私は同行させてもらえなかった。ゼルダも一度は渋られていたけど、こと遺物研究については中々譲らないのでリンクもラサムも諦めたらしい。
 …リンクと初めて身体を重ねた次の日、知らない記憶を回想した。
 かつての、最初の勇者が、私亡き後息も絶え絶えに、女神に私との巡り合わせを願った様子。私がいないから私の記憶じゃない。きっと女神が授けてくれたのだろう。

「今のリンク、すんごい手が早いと思うんだけど、どう?」
「ひゃい?」
「いや、前にが、リンクの下半身について相談してきた時は笑ったし驚いたんだけどさ。
 そもそもあの子体力多いし、百年前と違ってこう…若いでしょ。身体保つ?乱暴されてない?ああいう奴って一回線越えるとキリがなくない?大丈夫?」

 少し考えて、顔が熱くなる。夜の話をしているのか。

「……、………だい、じょうぶ…よ」
「本当ならいいんだけど…はリンクのためならなんでもする、なんて言っちゃう子だから。傍から見てて鬱陶しいくらいリンクもにベタ惚れだしそこは間違いないと思うけど、それなりに手綱引いておかないと。そのうちプレイの要求がエスカレートすんじゃないかと心配なのさ」
「……エスカレート?」
「外で人に見られながらとか、道具とか、入れるとこじゃないとこ入れるとか、そういう。初回に興奮剤を支給した私の言うことではないけどね!…って、え、顔が真っ赤ですけどすでにされてる?」

 あわてて首を振る。今の私は今のリンクには、多分普通のことしかされてない。…多分。

「……まさか、過去の勇者との情事の記憶もある?」
「………すこ、し」
「…………。ごめん、ごめんね、あの、めっちゃ気になる」
「そんなこと言われてもっ」
「優しい?激しい?上手い?下手?アブノーマルなプレイとかした?一晩何回?」
「プルア…?」

 ビクリとプルアが肩を揺らす。ギギギと声の方へカオヲ向ければ、しどろもどろな顔をしたゼルダと、相変わらず感情が読めないリンクが立っていた。…扉の向こうは大分暗い。塔の調査から戻ったようだ。
 今晩ゼルダはプルアのもとで休むようで、私はリンクと家に戻った。

「………下手?」
「はえっ?」
「俺、下手?」
「えっ」
「どういう風にされたの?気持ちよかった?」
「えっ、えっ?」

 家につくなり壁に追い込まれ、そう問われた。

「教えて」
「あの、リンクっ、」
「教えてよ。全部俺で塗り潰してやるから」

 逃げようにも背はぴったりと壁にくっついていて、感情の分からない顔でそう凄む。
 そうは言ったって、事細かに覚えているわけではない。…優しくこちらに微笑む顔を、よく覚えているだけで。

「どうやってキスされた?」
「ひぁっ」
「こうやって…、ゆっくり?」

 ついばむようにして、唇だけじゃなくキスが降る。

「それとも、深く?」

 困惑する私のくちのなかに、リンクの舌が入り込む。頭を掴まれ、舌がくちのなかを暴れまわった。歯列をなぞり、頬を裏側から舐めて、溢れる唾液を吸って。逃げることもできない私の舌を絡め取り、片手で腰を撫でた。

「ねぇ、どうなの」
「わ…、わかん、ないよ…」
「なら思い出すまで試そう」

 伝った唾液を舐めとって舌なめずりするリンクに肩を揺らす。何か怒っているのだろうか。
 彼は永い眠りから目覚めてからは、百年前とは違ってずいぶん親しみやすい性格になったけれど、記憶を取り戻した後は、百年前のように大きな感情の起伏を上手に隠すようになった。嬉しそうな時は隠しきれてないけれど、怒った時なんて、特に感情を表に出さない。
 他が情緒豊かだから、逆に怒っていることがわかり易くなってはいるけれど──どうして、怒っている、のか。
 リンクはひょいと私を抱き上げ、階段を登るとベッドへと放り投げた。青い服を脱ぎ捨てて、ギシリと音をたてながら近付いてくる。

「ねぇ、どんなふうにセックスした?」
「……!?」
「抱き合って?後ろから?前戯はどのくらいだった?一晩何回イった?何回出された?道具とか使ったの?」
「り、リンク、」
「ねぇ、教えて」
「…なんで、怒ってるの。怖いよ…」

 彼の無表情が、苛立たしげに歪む。
 視線を逸らして、唇を噛んで、躙りよっていた身体を離した。

「……ごめん。怒ってるわけじゃ、なくて……。俺じゃないやつとのセックスの話なんてしてるから、妬いた」
「………ごめん、なさい」

 そうだった。彼は、私が彼じゃない別の勇者の話をするのを嫌っている。かつての私と勇者の─恋仲であった話なんて、特に。

「えっと…私自身も、リンク…勇者も、それぞれ生い立ちや趣味嗜好も違うし…。
 ……傷ついてる姿ばかり鮮明で…それ以外は、ぼんやりとしてるの。ウツシエを見てるような」

 リンクは壁を向いたまま、ちらりとこちらを見る。

「なら、別に、俺が下手とか、誰が気持ちよかったとか、そういうのはないんだね?」
「ん、うん」
「……そう」

 こわばっていた肩の力が抜けて、リンクは長い息を吐き出した。がしがしと頭を掻いて、もう一度ごめんと呟く。

「…情けないな、俺。自信が持てない」
「そんなこと…」
「百年もかかったっていう負い目があるし。…一度、君を犠牲にしたって、いうのも、あるし」
「犠牲だなんて…!」
「うん。必要なことだった。あの状況じゃ仕方ない。それは分かってるけど。それはそれ。
 好きな子を泣かせて悲しませたっていうのは、引きずるんだよ」

 普段はあっけらかんとしているのに、時々リンクはこうやって、百年前のことを悔いている姿を見せる。きっといつもは考えないようにしているのだろうし、仕方ない、やれることはやったって納得もしているのだろうけど。やっぱり不甲斐なさを感じることはどうしてもあるのだろう。
 私も同じだ。百年前のことも、それ以前のことも。ああすればよかった、こうすればよかったってふとしたときに落ち込んでしまう。

「……リンク」
「ん?なぁに」
「愛してる」

 硬直して、リンクの顔が燃えるように赤くなる。不意打ちは成功だ。

「リンク、リンク、リンク」
「な、なに、どうしたんだ、突然」
「いま、私、とても幸せなの。私の悩みを晴らしてくれて、リンクがそばにいてくれて」
「………
「だから、えっと。…悩まないでなんて、言えないけど…つらいときは、私にぶつけてほしい。弱いところを、見せてほしいの。
 受けとめて、みせるから」

 するりと口からこぼれ出た言葉は紛れもない本心だ。つらいのを隠して平気そうに笑っている姿を見るのが嫌だったから。
 リンクは一瞬目を逸らした後、改めてこちらを向いてへにゃりと困ったように笑った。

「君を不安にさせたくないとか悲しませたくないとか以外にも、…男として、好きな子に情けない姿を見せたくないって心理があることは、理解してほしいんだけど」
「…うん」
「でも、そうだね。俺も意地張らずに、君を頼る。好きだよ、愛してる、

 優しく優しく、口づけをされる。照れくさそうに笑う顔はすこし子供っぽくて、なにかおかしくなって笑ってしまった。リンクは驚いていたけど、つられて笑い出す。巻き込むようにベッドに倒れ、寄り添った。

「……ね、、したい」
「………それは……いいけど……」
にしてほしい」

 首を傾げる。

に、愛されたいな」
「……、………? ……………!?」
「ねぇ、いいよね?」
「まっ、待って、そんな」
「ほらほら」

 抱きしめあっていた身体を引っ張られ、リンクの上に寝そべる形にされる。おなかには屹立したものがあてられ、もうそのつもりなのだとはっきり分かる。リンクはにこにこと笑っていた。
 しばらく悩んだあと、おずおずとキスをする。いつもと違ってリンクから舌を絡めてくる様子はない。必死に舌を伸ばして這わせる。吐息とともに熱っぽい声が漏れ、唾液が溢れた。
 リンクの手が私の頭をゆるく抑え、少しだけ角度を変えた。深く舌が届き隅々まで味わうも、息苦しくなって唇を離す。口の周りがべたべたなまま、ぼんやりする思考のまま首筋に吸い付いた。

「リン、ク。……あの……あれって……どうやるの?」
「あれ?」
「赤い跡」
「……強く吸うだけだよ。首筋よりも柔らかいところの方がやりやすいかも」

 と、リンクは服を脱いで胸元を指した。
 ちゅっとキスをして、言われたとおり強く吸う。しかしそれらしいものは出来ない。
 もっと強くしていいよ、と頭を撫でられた。……結局、出来なくて。

「まぁ、まあ。いいよ、出来なくても。それだけじゃないし」
「……ん」

 鎖骨のくぼみを撫で、下に降りる。薄い無数の傷を舐めれば、リンクは僅かに声を漏らした。

「それ、ぞわそわする」
「…ん、ん…っはぁ…こんな、とこにも…」
「っ…、」

 脇の下、腹、腕─普段のリンクなら絶対に攻撃を受けないような場所にまで、古傷がある。それほどの苛烈な戦いを乗り越えたのだ。悲しいけれど、今彼は生きているから。そんな傷跡さえ愛おしく感じて、何度も口付けた。

「……、も、それ…いい、から。こっち、触って」
「ん、ぅ…ふぁ、」

 するりと髪を梳かれ、手のひらを足の付け根へ持っていかれる。ズボンを張り上げテントを作っているそれを取り出し、そっと触れた。
 唇を押し付け滑らせながら、手のひらでやわく揉む。美味しいものではないのだけれど、リンクの身体であると思うと何でも愛おしいのだから不思議なものだ。ぴくぴくと震えながら先端から露を垂らすそれを口に含むと、リンクは小さく息を飲んだ。
 舌で包むようにして頭を前後させる。いろいろ考えたけれど、これが一番気持ちいいらしい。口に入り切らない分を手で擦り、行為を繰り返す。

「…は…っ、ぐ…ぅ、出る…っ」
「っん、んんっ」
「─…っふ、……」

 喉奥に白濁が吐き出され、少しずつ嚥下する。
 猫のように喉元をくすぐられ、驚いてこぼしそうになってしまったけれど、陰茎から口を離すとリンクはちょっとだけぼうっとした様子で私を見下ろしていた。

「…それ、おいしい?」
「………リンクの思う『美味しい』かはわからないけど…甘くて、…いやじゃ、ない」
「ふーん…」

 リンクは怪訝にしながら、私に顔を近付けて唇を合わせた。飲み込んだけれど、まだ少し残っているのに。それでも気にせず舌を絡ませるリンクを拒否出来ないまま、噛みつくようなキスを受け入れる。

「……甘い……?」
「えっ、えっ」

 訝しげなのは変わらず、「まぁいいや」と口元を拭う。私の頭を撫でる手を戻したリンクをちらちらと伺いながら、衣服を脱いだ。

「…そんなじっと見ないで」
「んー、うん?え、なんで?」
「は、恥ずかしい」
「そっかぁ」

 言いながらリンクは私を見る視線をそらしたりはしなかった。
 リンクに寝そべってもらい、挿入するために跨った。足を広げると、一連の行為でこちらも興奮が高まってしまっていることが分かってしまうのが恥ずかしい。滴る程に濡れている。
 いつもリンクが入ってくるところを先端にあてがいぐっと腰を下ろすが、中々上手く入らず入口を擦るだけになってしまう。陰核を刺激してしまい吐息が漏れた。

「……
「ん、ぅ」
は小さいから、少し……」
「は、…ぅ…?」

 リンクは手を私の手と重ね、促されるまま人差し指と中指を揃える。ぼんやりと見送っていると、重ねた指が私の膣へと挿入された。

「ひっ、んぅ…っ」
「とろとろにはなってるけど、少しほぐして」
「はぅっ、あっ?あっ、」
「そう、ここ、がすぐイっちゃうとこね」
「やぁっ、やめっ、あ、んんっ!」
「きもちいだろ」

 なかの少し奥を強く擦られ、背筋がひきつる。直接刺激しているのは自分の指だけれど、リンクの意思で動かされ止めることはできない。
 ちかちかと目の前が明滅する。前後不覚になりそうなところで、ふっと刺激が止んだ。

「ぅあ、……っ」
「ここ、ひくついてるの分かる?」
「…ん」
「じゃあ、……、足上げて、いりぐち拡げて?」

 促されるまま、足を抱き込んで両手指で付け根を伸ばし拡げる。…リンクがかつてないほどニヤつきを隠しきれてない顔で舌なめずりをしていた。

「……。おねだり、してほしいな」
「……………? ……えっ」
「ね?」

 いりぐちを陰茎でゆるゆるさすりながら、リンクは目を細めてにこにこしている。

「……、………っ。
 ……リンク、いれ、て…?」
「──…ふふ」

 にんまりと、嬉しそうな笑みで顔をほころばせると、リンクはゆっくりゆっくり腰を押し進めた。
 一番太いところがくぷりと音をたてて内側に入り込む。私の身体がぎゅうぎゅうにリンクを締め付けて、形を記憶してしまいそうだ。歪な凹凸が奥へと進んでいく。ゆっくりとした動きなのに、少しずつ中が擦れるだけで喉が引き釣り指先に力が入ってしまう。いけそうでいけない、じれったい。

「根本まではいったよ」
「はっ…はぁあ…っ」

 ぐるぐると眼が回りそうな感覚に耐えていれば、いつの間にかぴったりと体が密着していた。
 リンクはまた器用に寝転がり、私が彼を跨る体勢に変えられる。…いつもリンクのするがままされるがままだったから、飽きてしまったのだろうか。私の脚を撫でながら、リンクはただ嬉しそうに笑っていた。

「んん、ぁ…っ!」

 みだらな蜜音を鳴らし、快感に耐えながら腰を揺らした。お腹がくるしくて気持ちよくて、どうにかなってしまいそうなのに、リンクは相変わらずだ。
 ぐりぐりと奥へ押し付けて前後に動かす。私は今にもいってしまいそうになっているのにやはりリンクの表情は変わらない。だんだん不安になってきた。

「はぁっ、あ、りん…く…っ きもち、いい…っ?」
「うん、すごく」
「ぁ、あ…んっ…!りんっ、リンク、キス、して、ぎゅって、して…!」

 いろんな感情がないまぜになって、わけもわからなくなってぼろぼろ涙が溢れる。リンクは僅かに目を瞠って、すぐに起き上がって抱きしめてくれた。ぐちゃぐちゃのキスをするうち、頭が痺れて背筋がひきつる。彼の背中に爪を立ててしまった。

「っは、はぁ、は…」
「…イった?今、キスで?」
「………、」
「ふぅん…なるほど…」

 視線を逸らして息を整えていれば、リンクは私を押し倒し、陰茎を少し引き抜いて勢いよく突き挿れる。強い刺激にまた視界が明滅した。じわりじわりと溜まっていたものが、その動きで器が破壊されたかのように、次々快感が押し寄せる。

「あっ、あっ!やぁあっ」
「…っはァ……あー」
「ひっ、ん゛ぅうっ」
「ずっとイってるなぁ…」
「もっ、もうやぁあっ」
「んー?」

 ごつごつと胎の奥を突かれ、リンクの背中から手を離すことが出来ない。立てた爪を外さなくてはと思考の片隅では思うのに、それを実行に移す余裕がなくて、ただ意識が飛ばないように力を込めるので精一杯だった。
 リンクはといえば、時折キスを降らしながら、私をまじまじ見つめていた。にこにこと余裕そうに、それでも少し息が上がって耳まで紅潮している。

「俺を、見て、ぐちゃぐちゃになってるの、すごく、いい…いつも澄ましてるがさ、こんなにえっちになってるの、すごく興奮する」
「あ゛っ、ひぐっ、やっ、りんくぅっもっやだぁっ」
「えー、なんで?」
「あたまっおかしくなっひゃっ、〜〜っ!」

 ぐいと奥を擦られ、また絶頂する。言葉を失ってはくはくと口を動かすだけになってしまう。

「うん、俺も実は結構出してる。はイきっぱなしで気づかなかったかもだけど。見える?ここ、もうどろっどろになってるの」
「…っ、…っ」
「とろけた顔可愛い。…けどこれ以上すると意識飛ばしちゃうかな」

 おしまいにしようね、と、腰を揺さぶられ。また頭が白くなった。
 …それからしばらく、リンクは異様に機嫌が良くて、やけに優しかった。それはもう、居心地が悪くなるくらいに。そんな態度にラサムは気味悪そうにしていたし、ゼルダは困惑していた。何かあったのかと心配そうにしていたが、結局仲がいいのは良いことだと胸を撫で下ろしていたけど。





back next





耐えることもなし



「………」

 目の前にあるリンクの鎖骨をじっと見つめ、私は細長いため息をついた。
 最近は忙しくて行為をしていない。リンクは寝ると決めたらすぐ眠るし基本的に私の体調を慮ってくれる。そもそも別に性欲魔人ではないから、その手の欲は剣を振り回していると発散出来るという。それでもしたいと思う時というのは、リンクに言わせれば私が誘った時か、「君のいやらしい顔が見たいと思った時」らしい、けど。
 私は今、決して、そういう気分になっているわけでは、ない。けれど最近ハテノ村の自宅にいる時間が短く、寝に帰るだけになっていて、二人ともそれなりに疲れているし、リンクも日中たくさん剣を振り回していたから、…むらむら、することもないようで。
 決して、私がむらむらしているわけでは、決して、ないけれど。でもあの行為は私にとって、リンクに愛される行為というか、普段見られない表情が見れるとか、そういう幸せを感じるものであって。
 ちゃんと普段からリンクが大切にしてくれていて愛されているなぁと感じるけれど、そうじゃなく、て…。
 ………。
 決して、決して、むらむらしているわけじゃ、ない。
 けど。
 身を屈めて、そっと手指を股にやった。

「っん……」

 リンクを起こさないようにひっそりと片足を上げて、指を挟む。確かこのあたりを、いつもリンクが触っていた。何がどうなってるのかはよくわからないけど、ここを触られると背筋がびりびりとして気持ちよくなるのだ。リンクがやっているように摘むと、喉が引きつってあられもない声が出そうになって慌てて止める。起こしてしまってこんなとこを見られたらどう思われるか。おそるおそる人差し指で柔く押しつぶした。
 じんわりとした快感に呼吸が少しずつ早くなるのを、反対の手の指を噛んでこらえた。静かに、起こさないように。
 押しつぶす動きを、漏れる蜜を絡ませ擦ってみた。足先がぴくぴくと震え、リンクの胸板に顔を押し付けながら、気持ちいいのを求めて無心に繰り返す。リンクの指を、吐息を思い出しながら、やがて全身が痺れるように快感が駆け巡った。
 ほうっと力を抜いて、まだリンクがやすらかな寝息を立てているのを確認すると、どきどきしながら指を伸ばす。濡れそぼったそこにつぷりと挿し込んで、前にリンクが教えてくれた気持ちいところを探す。

「んっ…ん…ふ…」

 むずむず腰を揺らしながら、きもちいところを刺激する。リンクにされた時と随分違って、少しもどかしい。
 鼻先をリンクの胸板にこすりつけ、彼の少し汗をかいたにおいを吸う。ちらりとリンクの顔を盗み見れば、すうすうと規則正しく呼吸をしていて、時折つばを飲み込んでいる。まつ毛が長い。起きている時はもっと眉がきりりと釣り上がっているが、今は気の抜けた角度をして、やっぱり女性っぽい綺麗な顔立ちだ。そんな彼が剣を握ると途端にかっこよくなるのだから、それを思い出してまた頭がふやけてしまう。

「ぁ…はぁっ…ん、んん…っ」

 寝惚けた彼の手が背筋を撫でた。ぎゅうとなかに力が入って、駆け巡る快感に耐えた後、全身の力が抜ける。
 出来るだけ静かにと心がけた深呼吸の中、ぼんやりとした頭で指を抜き、目の前まで持ってきた。手はべたべたに濡れている。

「……拭かなきゃ…」

 あ、でも、流石に起きればリンクも目が覚めてしまうか。どうしようと思ったところで、誰かの手が私の腕を掴み持ち上げ、濡れた指をリンクの舌が絡み舐めとっていく。彼の舌がちらちらと見えて、また頭が沸騰しそうになった。
 そして、リンクと、目があった。

「楽しそうなことしてるね」
「……………、…………っ」
「え、泣かなくてもよくない?」

 先程までの熱が一気に冷めて、今度は羞恥と混乱とで沸騰する。
 少しだけ困ったような、でも嬉しそうな、愉しそうな。そんな表情のリンクが、私の指をちゅっちゅっと音をたてながら舐めている。口の中に入れて、甘噛みされて、唇と舌で包むように私の指を味わっている。
 涙をこらえようにも恥ずかしくてたまらなくて、手を振り払っていそいそと背を向けた。

「…腕枕に残ってる時点で甘いんだよなぁ…」

 ひとつ呟いて、なにかもぞもぞ動いたと思えば、リンクは体を密着させて後ろから手を伸ばし私の右足を持ち上げた。そして先程まで私が自分でいじっていた場所に沿わせるように陰茎をあてがう。

「ほら、使っていいよ」

 恥ずかしくてわけがわからない。そっぽを向いて枕に顔を埋める。

「うーん?…あ、そういうことか」

 閃いたように、リンクは私の肩を押した。
 うつ伏せにされ、促されるまま腰だけ立てる。ぬるりとリンクのそれが滑って、それで。

§



 の湿った吐息にぼんやりと目が覚めた。最近忙しくて体調を崩し発熱でもしたのかと思えば、どうにも違う。俺の胸に顔を押し付けて、もぞもぞびくびく震えているのだ。顔を赤くして、喉をひつらせ、涙を浮かべながら。
 自慰をしている。それを理解してすっと瞼を下ろした。俺がもう起きていることに気付けば、は羞恥のあまり泣いてしまうだろう。別にいいのに、自慰くらい。一番最初に俺が下半身丸出しにしていたことに比べれば何倍も愛らしいじゃないか。
 さすがに何をどうしているのかはわからないが、は指を噛みながら静かに気をやった。上ずった呼吸をしてこちらを見上げると、俺の精巧な狸寝入りに気付かぬまま身をよじる。いやらしい水音が真っ暗闇に滲んで、の呼吸も、また絶頂に向かおうとしているのがわかった。俺の服を噛んで声を抑えようとしているらしいが、普通に漏れている。俺は名前を呼ばせていやらしい声を聞くのが好きなので、いつも声を出すように口を開かせているのだが、こうしてバレないようにと密やかにして漏れる声も中々いい。
 は慰める手が疲れだしたのか、一線を越えられずにいる。寝惚けたフリをして彼女の背筋をなぞれば、それだけで全身を震わせた。とても敏感で少し心配になる。知らん男に触れられてなし崩しにされたりしないだろうか、と。ウルフもいるし基本的に目を離さないので大丈夫だとは思うが。
 濡れた手をぼんやりと見つめるに、俺もそろそろ抑えがしづらくなって。彼女の手を掴み、蜜を舐め取るため口元にやった。
 まだ頭がはっきりしていないのかそれを眺めていたは、次第に我を取り戻す。目が合って青ざめて、また真っ赤になった。忙しない子だ。
 俺の手を振り払って背中を向けるがベッドから出ないあたりわかりやすい。ズボンを脱いで陰茎を取り出し、の細い太ももにはさめば、まだ期待の感じられる蜜口に吸い取られるように密着した。末端で触れているだけでも分かるくらい、のそこはひくついていて、十分に濡れている。

「ほら、使っていいよ」

 なんて顔を覗き込みながら意地悪に言ってみれば、はそっぽを向いてしまう。でもやっぱり逃げるわけじゃないから、最後までしたくないわけではないのだろう。…最近、忙しくてシていなかったからか。鉱床狩りでよく体を動かしていたから、俺自身さほどそういう欲は残っていなくて。
 閃いた。
 起き上がり、の肩を押してうつ伏せになってもらう。腰を上げさせぺろりと夜着を捲れば、まろやかなお尻が顔を出す。
 いつもいつも思うのだけど、は何を思ってこういう格好なのだろうか。そう激しい動きをしないとはいえ、丈が短くて各方面への防御が薄い。細くて綺麗な太ももを惜しまず見れるのはいいけれど、俺じゃない奴に恥ずかしげもなく見せるのはどうなんだ。年頃の近い、女に飢えてる奴とか、結構ガン見してるんだぞ。
 だんだん腹が立って来て、のお尻を叩いた。

「ひぃっ…ん…っ」
「……、……?……イった?今」

 お尻を叩いただけだというのに、は身震いしてシーツを握る。問うても返事はない。

「前にもキスだけでイってたけど、敏感すぎじゃない?」
「…ふっ、ぅ…」
「ねぇ、これで挿入れたらどうなるの、

 陰茎の先を蜜口にひっつけて問うとは首を振るが、何に対する反応なのかわからない。
 ぬちゅ、なんて音を出しながら、先端だけを挿入し始めた。浅いところまでで出し入れをすれば、は肩で息をしながら、ゆらゆらと腰を揺らす。

「ねぇ、。このまま奥までいれたらどうなっちゃうのかな」
「はっ…ァ…っ」
「ねえってば」
「ひっ…んンっ」

 ぺしりとまたお尻を叩く。

「ぁ、あ…っい、いっぱい、いっちゃうっ」
「すでにいっぱいイってるよね」
「ごめっ、なさ」
「いや別に謝ることではないけど。そんなに欲求不満だった?」
「ちがっァあっちがっ、違うもん…!」

 あえぎ声の最中どうにか俺の言葉に返答するが、あまり要領を得ていない。

「なにがちがうの?俺の目の前で一人でいやらしいことして」
「ひッ…ぅ、だっ…て、リンク、つかれ、て…っる、からぁっいっしょにっ、いれるだけでい、のにっ。もっとりんくにっ、だきしめてほしくなってっ」
「……」
「で、もっ…そんな、こと…やらし、くて…っ」
「……それで、慰めてたの」
「……ん……」

 動きを止めて、抱き込むように覆いかぶさる。ぐすぐす泣くはもはや快感で涙しているのか否か。

「……俺は、殺気とか、気配とかには気付くけど、君の思うところは言ってくれなきゃわからない」
「ぅ……ん…」
「君が言ってくれれば、俺は何でも応えるから、」

 不格好なキスをして、それから。
 自分でもわかるくらい、『悪い笑み』を浮かべた。

「どうしてほしい?」
「ん、ぇ…?」
「俺に、どうされたい?」

 はうろたえるような声を漏らし、恐る恐るこちらを振り向く。不安そうな、でもどこか期待に満ちた顔で。

「…リンクの、好きなように、されたい…」
「…うん?」
「いっぱい…リンクに、触って、ほし…」

 きゅうっと心臓を鷲掴みされた気分になった。
 いや、普段からは、俺のためならなんでもする、なんて言うような子で。それは勇者に対する献身だと思っていたのだが─それだけでは、ないらしい。
 そういえば彼女にはそういう傾向があった。俺が軽い冗談で言っただけのときも、何かがしたい、何かが食べたい、見たい、なんて希望を口にしたときは、彼女が出来る範囲でならそれを準備しようとするし。夜の営みだって、最初は駄目だと言いながらもなし崩しに受け入れてくれる。単純に彼女の意志が弱いのかと思っていたけれど、弱いというよりもともと反抗する気がないのだから、受け入れてくれて当然だったわけだ。

「りんく、だけっ、リンクになら、いっぱい、いっぱい、」
「あー、わかっ、た。わかった、。俺にいじめられたいんだね?」
「んっ、うんっ。り、リンクに、きもちよく、なってほし、い」

 あくまでも俺が優先なのか。自分が気持ちよくなりたいというよりは、俺の欲望をぶつけてほしいということだろうか。うーんこれは、いわゆるドエムというやつか。お尻叩かれて悦んでたのもそういう理由。うーん、俺のがこんなに可愛い。
 後ろからお腹を抱きしめて、うなじに噛み付いて、腰をぐっと押し込んだ。密着したまま、柔らかくもきつく締め付けてくる中をゆるゆると突き上げれば、からまた甘い声が漏れ出してくる。

「あっ、あぅっひ、りんく、きもちいっ?」
「んっ、うん」
「うれしっ、んっ、あ、ぁあ…〜っ」
「っは、ぁぐ…んっ」

 可愛いことばかり言われては忍耐力もそう意味を成さない。どくりと奥へ白濁を吐き出せば、も身を捩らせて俺を締め付けた。一度陰茎を引き抜けば、俺の精液が一緒に垂れて足に伝う。
 ベッドに押さえつけていたを起き上がらせて仰向けにして、深く深く口付けた。その脇で、未だ興奮しきりの陰茎を突き入れ、また腰を揺らした。

「りんくっ、りんく、すき、すきっ」
、かわいい、…ぁ、ぐ…っん、んぅ…ッ」

 背中に回されたの手が爪をたてて俺の皮膚を引っ掻く。数度目の射精にがくりと脱力し、の横に寝そべった。久しぶりに荒々しく呼吸している気がする。もう体力が尽きかけてるはゆっくりと俺に添い、へらりと笑うと気を失うように寝息をたてはじめた。
 息をついて呼吸を整えると、身を清めるため起き上がって服を脱いだ。

§



 水と桶と手ぬぐいを素早く用意し、布団をめくる。精液やら汗やらで汚れたの衣服を脱がせ、丁寧に身体を拭いた。触れる度にまたぴくりぴくりと反応するので、愉しみながらもこちらの欲を抑えるのに忙しい。
 あらかたを拭ったあと、腰を持ち上げて脚を開けば、蜜口からこぽりと白濁が溢れる。手ぬぐいを宛てがいながら、指を挿し込み俺が出したそれを掻き出していくのだが、この作業はどうにもむなしくなる。いや、精液が女の体に吸収されるわけではないので当然のことではあるし、口でしてもらった時はは飲んでくれるのでそれはそれでいいのだが。
 なかに指を入れれば、行為の直後でとても敏感になっているは、眠っていても湿った声を漏らしてわずかに腰を揺らす。とてもえっちな子である。激しくしてしまってが早くに気を失ってしまった時なんかは、このまま指で弄ってしばらく反応を愉しむのだが、今日はとても満足だったので必要はない。
 きゅうきゅうと俺の指を締め付ける膣は、あれだけ貪った後だというのにとても狭くて、女性の体の不思議さを感じた。
 一通り拭き終わって、また手ぬぐいを水桶で洗った後自分の身も軽く拭いて、全裸のままの横に倒れ腕枕をする。汗で張り付いた前髪を払い、額にキスをする。
 これから夜明けまで、彼女の寝顔を見つめて穏やかに徹夜だ。





back next