それ何、と思わず咄嗟に問いかけてしまった。
場所はゴロンシティ、基の部屋だった。ゴツゴツしたゴロン族のようなところではなく、
おそらくは唯一の女の子だから蝶よ花よと育てられたのだろう、
カカリコ村どころか城下町の女の子の部屋のように可愛らしい部屋だった。
は何のこと、と首を傾げる。俺は机の上にあったノートのようなものを手に取る。
「ああ、それは…」
思い出したように優しく笑んで、見てみるといい、そう言う言葉の通り、古い紙を捲った。
―それは、一人の少年の物語。
成長しない子供の種族、コキリ族の元で育った少年は、ある日森の守護を司る大きな木に呼ばれた。
巨悪に立ち向かうため旅に出ることとなった少年は、大切な少女と共に世界を救った。
しかし幼い少年は、途中その未熟さを埋めるため七年もの長い眠りについていた。
その七年を再び過ごすため、神秘の歌によって少年とその周りの時が七年前に戻された。
戻った七年前は、少年が旅を始めるより少し前。最初少年は、戦った七年後のような闇をもたらさないために奔走する。
ついにその使命を終えた勇者は、あることに気付く。その世界では、少年の偉業はある必要のなかったもの。
それを成すために築いた人々との信頼関係も、すべてなかったことになっていたのだ。
少年はその寂しさに首を振り旅を続けた。育った森に戻ることも出来ず、大好きな人達に知らぬ顔をされることが怖くて。
『僕は、なんのために』
『それはきっと、わたしのために』
ずっと側にいてくれた少女のことを少年は思い出した。
『わたし、あなたのことを書き留める。みんなが知らなくても、きっと…次の勇者はあなたに焦がれる。
だから、世界の色んな所に、あなたの凄い所を分けて隠すの』
「………」
「…本当はリンクを探して旅に出たんだけど、その先で最初にこれを見つけて、それで…」
「…そうだよな。ハイリア中回ってたんなら、トアル村もそこまで隠れ里なわけじゃないからもっと早く会えてたよな」
リンクはざっと軽く読み終わってじっとそのまとめられたノートの表紙を見つめた。
子供のらくがきのような絵が、そこに描かれている。
「これさ」
「うん?」
「俺?」
「……違うと思うよ」
は間を開けて苦笑する。けど、と呟いてこちらを見て、俺の背にあるマスターソードを指した。
「ウィンドストーン。その近くに、これは隠されてあったの。
ウィンドストーンの方はわたしにはどうにも出来なかったけど…きっと、」
俺が覚えたいくつかの奥義。それは骸骨のような不思議な剣士に、不思議な空間で教わった物だ。
『あなたの凄い所を分けて隠すの』
「―きっと」
「なに?」
「すごい人だったんだな」
そんなつぶやきに、は呆けた後微笑んだ。
「そうだね」