「リンク!!」
「……えっ?」

大声で名前を呼ばれたと思えば、視界いっぱいにの顔があった。心配そうに顔を歪めていて、僕が呆然としたままながら彼女の名前をつぶやけば、は僕に抱きついてわんわん泣き始めた。

「ど、どうしたの、
「どうしたもこうしたも!森のなかではぐれてっ!エポナだけ戻ってきて…!エポナの案内を頼りに探しに来たら、洞窟奥の深い穴の下で気絶してて!」
「えっ、ええっ?」
「三日も目が覚めなかったの!なのに、突然泣き始めたり、痛がったりして…!心配したんだからね!?」

泣きながら怒って僕の胸を叩く。痛くもなんともないのだが、の頭を撫でてごめんねと呟いた。

「ぜったいゆるさない」
「えっ」
「許さないんだからー!」

うわぁああん、とはまた泣いてしまった。
―あの繰り返した三日間は、まさか夢だったのだろうか?襲い来る月も、各地を巡って巨人の協力を仰いだことも、スタルキッドやチャット、トレイルと友達になったことも。
なんとも言えない感情が胸の中に渦巻いて、けれどあることに気づく。そういえば、あの世界には―正しくは、に似た子はいなかった。
とはぐれてタルミナに迷い込んだのだから当たり前なのだけど―牧場の娘とか。妙齢のお姉さんとか。ゾーラのプリンセスとか。そういった"類似"という意味でだ。
ぎゅ、と未だ泣いているを強く抱きしめて唇を尖らせた。決して泣きそうなわけじゃない。

「…リンク?ないてるの?」
「ないてないよ。泣いてるのは
「…うん。そうだけど。なんかリンク、複雑な表情してる」
「…うん…」

まだ僕は生まれて十何年も経っていないというのに、なんというか繰り返す日々を過ごし過ぎているような気がした。
なんだかなぁ、と思いながら、またの頭を撫でる。
タルミナのことが夢だったとしたら、やはり何か思うところがあるということなんだろう。…けど、でも。

「リンク?」
「ちゅー」
「う、うぅ…」

おとなのふりをして、に口付ける。
名誉も栄光もなくっても、が僕のすごいところを見てなくても。
夢物語に胸を躍らせてくれて、僕と一緒にいてくれているのなら、それでいい。
色んな感情に蓋をして、僕はと眠りについた。





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(ムジュラが三途の川的な位置にある世界じゃないかと思って。月って、死の象徴だし。死の象徴が近づいてくるって、そういうことじゃないかなって。)
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