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ドゥムヤ(狂)/戦神宿るが如き
「あ、マスター。ちょうどいいや」
「どうかされましたか、ドゥムヤさん」
「ちょっと体を動かしたくてね。シミュレーションを使っていたんだけど、やりすぎだって怒られちゃって」
「…想像に難くありません」
「そこで、かつての特異点でまた不穏なものが見られるから、足りないならそっちに行ってくれって。同行してくれるかい?」
▼もちろん
「これは…何が起こって…?」
「いいねぇ、戦場の匂いだ。枯れ始めた大地で食糧難でも起こったというところかな。特異点となったことでもう少し保つはずのものが足りなくなったんだろうね」
「……!」
「歴史に語る程でもない小競り合いだったのが、魔力の残滓のせいで中途半端な力を得た。だから妙に長引いている。……どうしたんだい、マシュ。それ、どういう表情?」
「い、いえ、すみません。今はバーサーカーの霊基でいらっしゃるのに、随分現状把握が早いというか、的確というか、驚いてしまって…。プリーストクラスの時ならば違和感はないのですが」
「ああ、そりゃ慧眼は元々持ってるスキルだからね。プリーストクラスの時は、そこからさらにクラス補正で千里眼ばりの性能になっているけれど」
「そうなのですか…!」
「そうなのです。逆に言えばプリーストクラスの時と比べて視野は狭いし、バーサーカーだから多少鈍いけれど、目の前で見た状況くらいならわけないさ。
さて、じゃあ不穏分子を探さなきゃだけど…現状争いが起きているところかな、やっぱり」
「はい、行ってみましょう」
◆雑魚兵とバトル
「…。あの、どうしてドゥムヤさんは、戦ばかりなさっていたのですか?」
「うん?」
「逸話では、成人直後から他国と戦ばかり起こしていた、戦しか脳のない…と」
「んん?あー…。そりゃ弱小国だったし、僕の戴冠前は他国に狙われまくっていたからね。まだ治世も知らないだろう王子が戴冠するってなればいくらでも理由を付けて侵略できる。だから戴冠前は戦に明け暮れてよそを牽制しまくってたんだよ」
「なるほど…ドゥムヤさんの物語は媒体によって細かい内情が全然違うので、ご本人からお話を聞けるのは嬉しいです」
「…ふ。いけないな、嘘は付けない質だから、聞かれたらなんでも口が滑っちゃうや。
…と、おや…?」
「あれは…シャドウサーヴァント!?」
「…魔力の残滓…なるほどシャドウサーヴァントが現れれば、無駄に活気付くのも致し方ないか?っと」
(攻撃される)
「ドゥムヤさん!」
「…はは。マシュ、マスターの守りは任せたよ」
「あっ…!り、了解しました!護衛に徹します!」
◆シャドウサーヴァントと戦闘
「ふぅ、ふー…」
「お疲れ様です、ドゥムヤさん。怪我などはありませんか?」
「平気平気。加護は働いてる」
「加護…月下の加護、でしたか。月が出ていなくても?」
「月は見えないだけで常に存在するからね。確かに出力は半分以下だけど、シャドウサーヴァント程度なら問題ないし、それとはまた別の加護の方」
「別の…?」
「僕の戦神加護と月下の加護は別ものでね。いや、厳密には同じなんだけど少し違う。夜、月の下は両方バリバリに効く」
「そうだったのですか…どういう違いがあるのですか?」
「戦神加護はそうだな、簡単に言うと攻撃に特化した加護。傷を負っても痛覚を遮断してでも剣を振るう。バーサーカーになった所以だね。
月下の加護は逆に守り、僕の肉体の保全に特化した加護。最大出力なら特定以下の攻撃は効かないし傷も治る。夜じゃないとどれだけ魔力供給があっても効果は弱いし馬鹿みたいに魔力を喰うから、プリーストクラスの時は両方ともあの防具で遮断してるんだ」
「あの防具や装飾は魔力拘束具だと言っていましたね」
「そう。どっかの誰かにプリーストなんてよくわかんないクラスで召喚されるまでは、僕の最多召喚クラスはバーサーカー。まぁ現界しただけでマスターの魔力をすっからかんにするから、戦いに参加したことはほとんどないんだけど」
▼そこまで!?
「嫌がらせも兼ねてるけど。プリーストクラスでの召喚があったから、こうして君たちとものんびり話しているけれど、僕そんなに優しくないもん。バーサーカーでなんて戦うだけに喚んでおいて、万全なバックアップも出来ないんなら僕が代理で戦ってやる義理もないよね」
「…ドゥムヤさんは、いつも朗らかな方だと思っていました…なんだか意外です」
「優しい僕も僕だけど、こういう性格なのも間違いないよ。プリーストクラスじゃなかったら、カルデアの召喚なんて応じないし」
「!」
「プリーストクラスがあまりにも特殊でね。僕の知ったところではないんだけど」
「プリースト…僧侶のクラス。七騎以外のエクストラクラスは、やはりどれも特殊なのですね」
「特定のものに対抗するためにどっかの誰かが捩じ込んだ枠だからね。そういう星のもとにある人じゃなきゃ召喚できないだろう。君たちみたいな」
「…、それは…」
「まぁ何にせよ、プリーストの僕がいて、その上で霊基をいじくっただけの僕がいるのなら、よほど大丈夫。理性を持った狂戦士、なんて矛盾も甚だしいけど、勝ちたい時はバーサーカー、それ以外はプリースト、と上手く使い分けてくれ。なんでも諸刃の剣だよ」
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ドゥムヤ(聖)/聖王の唄
「………。」
▼どうかした?
「ここはもうある程度安全だし、君はマシュと待機しててくれて構わないんだけど」
▼サーヴァントはマスターから離れない
「だからマシュにも同行を願ったんだけどな」
「サーヴァントがマスターから離れると出力が落ちるというのもそうですが、貴方のような方が単独行動するのはいささか不安だと、ダ・ヴィンチちゃんが」
「あれれ、僕そんな信用ない?」
「信用がないと言うよりは、カルデアの指揮外で何かしらの情報を仕入れておきながら、それを開示しないのでは、というように聞いています」
『特殊も特殊なエクストラクラス、プリーストのサーヴァントはどういうサーヴァントなのか、まるでわからないんだ。ステマ・ロードが我々に力を貸すため、その霊基をサーヴァントとして召喚出来る程度に落としたとしても、その特性上色々なものを見通せて、更にはそれを開示出来ないのは仕方ない。しかし君にその手の制限はないだろう?』
「それはそうだけど…」
『そして君はロードよりも高いと思われる規格外の見極めスキルを有している。千里眼のようなぶっ飛んだ性能じゃないが、比肩できるほどの力を秘めていると僕は睨んでいるが、どうかな?』
「スキルがどんな性能かなんて僕が計ることじゃないからね、知ったことじゃないよ」
『む、そして躱すのも上手い』
「嘘はつけない性質でね。その分ごまかすのは得意なんだ。…と、骸骨モンスターのお出ましだ。いいね、多少体を動かすとしようか」
★
「…それでドゥムヤさんは、どのような用でこの特異点Fへ?何か異常の予兆でも…?」
「だから僕に未来視とかの能力はないって。そういうのじゃなくて…ううん、ちょっと探しもの」
▼そういえばドゥムヤと初めて遭遇したのもここだったね
「ああ、そうだね…らしいね。なんだっけ、聞いた限りでは君たち最初の旅路で、キャスターのクー・フーリンと僕のところに来て、その後黒いセイバーを倒したんだっけ。すごいねぇ」
「私達もどうやって倒せたのか…」
「僕もフルパワーでならどうにか倒せるけど、ああでも君の中の英霊を考えれば当然といえば当然か」
「え…」
▼倒せる…?
「フルパワーならね」
『というか戦ったことあるのか!?』
「あ。…うん、まぁね。ほら、カルデアのシミュレーターでよく付き合ってもらうんだよ」
「な、なるほど…?…そういえば、あの時とは剣が少し、どこか違いますよね。違和感があります」
「そりゃ今は封印されてるからね、本来の宝具は使えないんだよ」
「使えない…?ですがいつもは普通に」
「竜の墓守、あれは剣じゃなくて技術だからね。剣持ってりゃいつでも放てるよ」
『―…何も言わないから持ってきてないのかと思ったが、君、あの剣持ってるのかい!』
「そりゃ持ってきてるよ。セイバーとか他のクラスだったら持ってこれなかっただろうけど、特殊クラスだからね」
『ならなんで使わないんだい、君というサーヴァントの真髄じゃないのか!』
「えー。そんなこと言われてもなぁ。僕が一度このクラスで召喚されたことがあるから、カルデアにもそう召喚されただけで…真髄とか言われてもなぁ。本来あの宝具は、聖杯戦争では必要ないものだ。戦うだけなら、竜の墓守で十分だろ」
『それはそうだけど…でも気になるじゃないか、"蠢く屍を天上に還した月の聖剣"』
「そんな大層なものじゃないよ。聖杯戦争とか、ほんとに使い所ないし」
「私も、気になります、月の聖剣…」
「…。いや、そんな懇願されてもね…」
▼どういう時なら使えるの?
「ん?そりゃあ…そうだな、人類の悪、とか?」
「はい?」
『え?』
「と、いうのはちょっと盛りすぎたか。でもそういう悪いものに対して能力を発揮するのは確かだ。けれどカルデアに来れば、僕よりそういうのが得意な連中はいくらでもいるだろ」
『いや、君がさっき冗談めかして言ったのが本当なら、比類するものは早々ないと思うんだけど…』
「逆に言えば"そういうもの"以外には一切効かない。だから使いどころないんだって。それこそあの黒いセイバー相手でもなければ意味はな、…」
『は!ごめん見てなかった!それは…セイバーのシャドウサーヴァントだ!』
「でもいつも見るシャドウサーヴァントより、その…まがましいといいますか…」
「…なんてことだ、僕としたことが。口は災いのもとだな」
『何のんきしてるんだいドゥムヤ!敵は臨戦態勢だぞ!』
「わかってるよ。 ………マスター」
▼どうした
「君は、見たい?僕の宝具」
「ドゥムヤさん…?」
▼見てみたいな
「ふふ。なら、解放しておこうか。と言っても、これには君の協力が必要だ。令呪の魔力リソースがね」
▼わかった
「物分かりがいいね君。お兄さんちょっと心配。ドクターロマニも、少しばかり警戒してくれ」
『へ?』
「カルデアでの場合、どういうことになるか分からないからね。これのロックを解くと、他にも色々一緒に解除される。アレを消し飛ばしたらすぐにまた封印するけど、何にせよ魔力消費がバカにならない」
『…!』
「敵シャドウサーヴァント、来ます!」
★第三スキル解放でシャドウサーヴァントとバトル
「我が真なる宝具。欲を断ち切る天還の光、すべての怨恨を空へと運ぶ月明の標。さぁ迷える魂よ、導かれし刻は来た!??天還せし月明の剣!」
「…すごい、一撃で…シャドウサーヴァントが…!」
『消し飛んだ!そして言うとおり今のでとんでもなく魔力が消費された!』
「だから言っただろ?僕かなり燃費悪いサーヴァントなの。生前なら自力で魔力生成するだけの話だけど、サーヴァントとなれば自己回復スキルだってマスターからの魔力がなきゃ出来ない」
『自己回復スキルも持ってるのかい君…生前の方が強いサーヴァントはよくいるけど、ドゥムヤもそうだとは』
「生前の方が強いサーヴァントは、極端な例を上げれば、神霊と同じように出力を下げないと召喚使役出来ないものさ。…さて、今日は帰ろうか。このままだと僕も昂っちゃってまた無理をさせるかもしれないしね」
▼また
「うん?」
▼また見せてね
「……。ふふ。この宝具が、役立つ時は、ね」
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ラジェル/夫婦生活
「どうぞ、マスター。ポテトサラダです。…如何ですか?試作ではありますがそれなりの自信作です」
▼おいしい
「ラジェルさんはお料理がお上手ですよね!ほのぼのとする家庭料理、とても美味しいです」
「ありがとう、マシュ。夕食の際にはデザートを差し上げましょう」
「そ、そんなつもりで言ったわけでは…。いえ、しかし母のように微笑むラジェルさんには逆らえません。ありがたく頂きます…!」
「今日はわたくしも厨に立ちますし、マスターにもおかずを分けます。たんと食べてくださいな」
▼わーい!
「…その、前から気になっていたのですが」
「どうしました?」
「ラジェルさんはどこで調理技術を得られたのかな、と。ガウェインさんとは和解していないと前におっしゃっていましたし…」
「和解はしていませんが、妻としての責務はしっかり果たしたと自負しています。料理洗濯、近所付き合いや上司同僚への気配り、彼が戦に赴く際はまじないをかけたりも。
ですから料理技術というか意欲は、生前その際に興味を持って以来ですね。今の時代の新しい厨房はまだ慣れていませんが、他の調理場担当に教えて頂きながらなんとかこなしています」
「得意というわけではなかったのですね!すみません、調理場に立たれる方は皆さん慣れてらっしゃるので」
「いいえ。言ってはなんですが本来はそのようなことはやるはずのないものですから。わたくしが不慣れなのに無理を言ってやらせていただいているというだけのこと。生前はそれこそ、まともに美味しいと言ってくださる方はいらっしゃらなかったので、喜んでいただいて嬉しいです」
▼生前は下手だった?
「それはどうでしょう。胸を張ることはできませんが、食べられるものだったとは思います。ランスロット卿の表情で判断する限りでは」
「…ランスロット卿…ですか?」
「ええ。何かと心配して訪ねてくれたので、習作を食べていただいたことが何度か。口では美味しいと言っていましたが、中の下、という反応でした」
「なぜガウェインさんではなく?」
「彼の舌は信用出来ませんでしたから」
「…、」
「それに仮にも夫に不味いものを出すわけにはいかないでしょう。そこはわたくしの矜持が許しません」
「なるほど。…あの、せっかくなのでもうひとつ、気になっていたことを聞いてもいいですか?」
「なんなりと」
「その…どうして和解し得なかったのでしょう。伝説通りの会話がなかったのですか?」
「……。わたくしも女です。面と向かって嫌と言われて、腹が立っただけです」
▼悲しいではなく腹が立った?
「ええ。兄さまなら老婆だろうと優しく接します。なのに彼は口煩い年上の老婆だから嫌だと拒否した。いえ、その気持ちはわかります。けれど別に閨を共にしたいと言ったわけでもないのにその繕わない態度に腹が立ちました」
「…ええと…」
「ああ、慰めは結構。…それで、兄さまと似た顔が怪訝に歪むのがたのし、んんっ!いえ」
「え?」
「いえ、いえ。腹が立って、ついはねのけてしまったのです。故に呪いを解くことができませんでしたが、それはそれで趣味の範囲内。今に至るというわけです」
「そうだったのですか」
「実際彼はそれなりに気遣ってくれましたし、不満などは今も持ち合わせていません」
▼それ本人に伝えたらどうだろう
「嫌です」
「そ、即答…何故ですか?ガウェインさんはラジェルさんを気にかけていますよ?」
「それが嫌なのです。何故と言われても、嫌だから、という即物的な返答しか―」
「マスター、少しよろしいでしょうか。先ほど道すがらダヴィンチ女史に、…」
▼あ
「あっ…」
「ではマスター、失礼します」
「ラジェル!待ちなさ…」
「貴方はマスターに用があって来たのでしょう?ならばそれをこなしなさいな。任されたことを途中で放り出すなんて騎士として疑います」
「くっ……。マスター、礼装の修繕が完了したので届けて欲しいと」
「あ、ありがとうございます」
▼ありがとう、いってらっしゃい
「ご武運を…!」
「感謝します、マスター!」
...
▼さて、追いかけよう
「ええっ?確かに気になりますが…しかし…!あ、あっ待ってください先輩!」
...
「ラジェル!待ちなさ、いえ待ってください!」
「何用ですか。生前の頃の話ならばいたしませんよ」
「なんと。…あなたはどうしてそう、私に対して辛辣というか、あたりが強いのですか。円卓の騎士には口止めでもしているのですか?あなたについて何を聞いても生暖かく笑うだけ。…このカルデアに至って、あなたの息がかかっていないサーヴァントにようやく聞き込みをすることが出来ました」
「暇人なのですね」
「…、暇なのではなく、隙間時間の有効活用をしただけです。それで!あなたに、確認したいのですが」
「はぁ」
「…、あなたは、その…」
「なんですか」
「その…私を…」
「貴方を?」
「…、…。先程までは聞く耳も持たなかったのに何故今になってこちらを凝視するのです!」
「貴方が話を聞けと言うからでしょう。用がないならもう行きますよ」
「あっ、待っ…」
「………」
▼………。
「なんというか、ラジェルさん…」
▼面白がっている節がある
「…。先程言いかけた言葉ははやはり…」
「何を盗み聞きしているかと思えば。あの二人ですか」
「アルトリアさん!はい、あの、盗み聞きというとその」
「お気になさらず。事情を知っている私ならばともかく、伝説のみを知る者からすれば、二人の関係は意外というか心配になるものでしょう。ですが、…まぁ、あの二人は生前からあんなでした。ラジェルによれば、ガウェイン卿が『口うるさい年上は嫌だ』と言ったのは事実らしいが、がといってラジェルはそれを一切気にしていません。ガウェインもちゃんと彼女に対する印象等は意見を入れ替えたようですし」
▼このまま放っといた方がラジェルは愉しいわけだ
「…、…!」
▼マシュ?
「い、いえ。なるほど…」
「どうされました?」
「追うより追われる…というやつですね。本で読みました。ならば確かに、外野は余計な茶々を入れないほうがいい…!」
「…ふふ。よくわかりませんが、納得して頂けたのならそれで」
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立花宗茂/人として生き、違うことなかれ
◆VS柳生但馬守宗矩で訓練戦闘
「ようマスター。どうかしたのか」
シミュレータから宗茂と柳生が出てくる。手合わせをしていたらしい。
「いや、二人が戦闘訓練に入って長かったから、心配になって」
「うん?シミュレータの長期使用に懸念事なんてあったのか?」
「いや、そうじゃなく…お互い時間を忘れて没頭しすぎてないかと」
「安心されよマスター。立斎殿とは生前立ち会うこと少なかった故、確かに興が乗りすぎることもあろうが─、我を失う、など。私はともかく、立斎殿がそうなることはまずあるまい」
「柳但は毎度過大評価し過ぎだろう。ここに将軍がいるわけでもなし、俺をヨイショする必要はないぞ?」
「今回はどっちが勝ったの?」
「今日は遠距離始めだったから俺だな。まぁ柳但は間合いとか一瞬で詰めてくるから距離関係ないんだが」
「何を言う、遠距離中距離近距離全てで足止めされてはこちらも攻めきれぬというもの」
「遠距離から一足で懐に入って同時に斬ってる奴が言うか?お前俺の三倍速いんだぞ」
「防がれていれば意味もあるまい」
「……二人は生前からそんな風に仲良かったの?」
「いや…同じ主に仕えていたものの、立場もあったために今この時のような気軽さは無かった。ここかるであに至って、呼び名も生前から改め、共に戦う者として交流している」
「生前はお互い名字か役職呼びだったからなぁ」
「立斎て?」
「俺の晩年の名だ。宗茂の次、最後の。名前というか号だが」
「へぇー…ねえりゅうたん、宗茂ってどんな人?」
「本人に聞けばよかろう」
「宗茂は謙遜ばっかで、周りから聞く情報と違い過ぎる」
「…俺は嘘偽りなく答えているつもりなんだが」
「立斎殿は謙虚が過ぎるわけではない、マスター。これは単純に、彼にとって万事"出来て当然のこと"であるだけだ」
「出来て…当然…。天才肌ってこと?」
「簡略的に言い換えれば、そうなろうが。よく公から聞かされたものだ─立花宗茂は、人ではない、と」
「…人ではない?」
「どういうことか、と問うたことがある。武神、鬼将軍などと畏怖され、有能故に出世を封じられながらも最終的に旧領を得たことは、確かに人を越えたと言って良い偉業である。しかし聞いたのは立斎殿が旧領を回復する前。家康公の時代から、将軍系譜に語り継がれていた話だという」
なんのこっちゃ、とばかりに宗茂が首を傾げる。
「両父君、紹運殿も道雪殿も名武将であり、特に養父道雪殿は雷神とまで謳われた方」
「雷神の息子だから怒らせたら怖いってこと?」
「その二人のもとで育ったからこそ、立花宗茂はようやく人のかたちをしているだけの、もっと別の何かである。故に、立花宗茂を起こすな、怒らせるな─と」
「なんだそれ、聞いたことないぞ」
「このような話、当人に話すものではなかろう」
「別に怒ったくらいで大層なことしでかすつもりもないんだが?」
「貴殿はそもそも懐が広い。めったなことで憤ることもない。だからこそ、だ。普通は温厚な者ほど怒りを溜めやすいが立斎殿はそうですらない。人にある怒り─正しくは妬み憎しみという感情を知らない。故に将軍は貴殿を恐れ飼い殺したのだ。何が貴殿の逆鱗に触れるかわからぬ。立花宗茂の中に潜むなにかを、起こさないよう」
「……。あー、なるほどなぁ……バレてたんだな?」
「当時の私には考えが至らなかったが、おそらく。特に初代将軍は織田信長─第六天魔王、というような存在を知っている。ならば察しもつこう」
「どゆこと…?話が難しくなってきた」
「立斎殿は人ではない、という話だ。その身の内に、神を納めている」
首を傾げる。
「…義父上殿が雷神を斬った、というのは知っているだろう?」
「うん」
「空に浮かぶ雲の間を駆け回り、徒に稲妻を大地に落とす。現代じゃその原理は解明されているが、古来よりどこでも雷を操る神の存在は信じられてきた。だから義父上殿は神殺しとなったわけだが─ま、もったいぶらずにいうと、この時ぶった切られた雷神が俺だ」
「はぁ……はぁ?」
「持ってたとある…怨嗟を両断された清らかな俺の魂的なものが、父上のもとに生まれ落ちたわけだ」
「えっええ?………お父さん方は知ってたの?」
「父上はどうか分からんが、少なくとも義父上殿は一目で分かったらしい。養子に迎えられた際一番最初に言われたからな。『これはお前を切った千鳥の刀だ。お前を切った後に刷り上げ見目は少し変わっているが』って」
「噂に違わぬ傑物なのだな」
「そりゃそうさ。義父上殿はその時、『またかつてのように怨嗟を振り撒き人として道を違うならば、病床からでもこの雷切でお前の首を落とす』って脅されたからな」
「それでよく断らなかったね」
「そんな段階に至っていれば断れないというのもあったが、何分俺には雷としての悠久な記憶はあっても養父上殿の言う怨嗟に覚えがなかった。せいぜい悪ふざけというか…悪戯で雷を落としたくらいの気だったからな。怒られて仕方ないことではあるが、そこまで重く受け止めることでもない、と。
…いや、生前こそ運に恵まれてそういうことにならなかったというだけで、義父上殿は、俺が人道を誤れば必ず雷切で俺の首を落とすだろう、と明確に言える」
「へぇ…人道を誤るって、たとえば?意地悪とか?」
「さすがにちょっとしたことなら許されるだろう、自由意思が無くなるわ」
「時代的にも切り捨て御免は致し方なく…果たして?」
「明言されている訳じゃないが─例えば、そう。一切鏖殺、とか」
「…………、」
「む……」
「義も忠も無く怨嗟を持ってそんなことしようとすれば、間違いなく俺は雷切によって死ぬだろう。……外部から植え付けられるんでもなければ、俺がそれをすることはない、と断言しておくが」
「……宗茂はもしかして、下総にいたの?」
「─さぁ。どうだかな」
「しかし立斎殿。そこまで自らが清廉であれると断言出来るとは」
「はは。いや、そうする前に義父上殿が断罪してくれる、という信頼があるだけさ」
「ふむ。貴殿ほどの男を育てた大友両壁だ、信じれよう」
…
「…宗茂は本当に恨みとかないの?聖人君主なサーヴァントは結構いるけど」
「信じられないって?」
「いや、そういうわけじゃないけど。雷切が首を狙うほどのものは抱かなくてもさ」
「ああ…、うーん。意識したことがないからなんとも言えん」
「じゃあ、どんなことなら怒る?」
「ふむ……。いや、それも考えたことはないなぁ…あっ、雪下の奴が足に刺さった毬栗を押し付けてきた時はムカついたぞ」
「それは逆にあまりにもちっさくない?」
「となるとそうさな、まぁ…民が虐殺されたとか、今ならマスターが殺されたとか、そういうことされたら怒るかもしれん。……いや、怒るかな…義に乗っ取って敵討ちくらいは…しかし義父上の敵である島津もな…うん、その時になってみないとわからんな」
「いいんだか悪いんだか…。……もし下総で宗茂が剣豪として召喚されて敵になってたら、と思うと身震いするよ。雷切に感謝しなきゃ」
「(サーヴァントとなった今考えると、かつての怨嗟というのも察しが着くが……、いや、少なくとも記憶はないし…)…ああ、そこは感謝していいぞ。……さて、話してたら体を動かしたくなってきたな」
「またぁ!?」