風采迎合、怯懦蹂躙の恍惚

剛毅果断、落花狼藉



 ファデュイに所属する連絡員はもちろん一人だけではない。だがきっと、ここまで公子殿につきっきりでいるのは彼女くらいだろう。しかしこの奇妙な関係は、果たして彼女がその任についたから始まったのか、奇妙な関係であったからこの任に着かされたのか。それは謎である。
 今日は一日北国銀行で雑務をしていた。人手が足りないなどという情けない理由ではなく、現在の璃月での銀行業の需要と人事調査のためである。あとは、万に一つも不正や怠慢がないか。
 それらを終え、食事でもしようと夜勤に代わり銀行を出た。するとそこにはまた待ち構えるかのように彼が─公子タルタリヤが立っていた。にこやかに挨拶をする彼に頭を下げる。
「報告は明日伺いますので、今日はもう休んでくださって結構ですよ」
「そう、わかった。じゃあ一緒に万民堂で食事でもどうかな」
「お断りします」
「食事しにいこうとしてただろう?奢るよ、好きなもの食べていいから」
 そういう話ではない…という言葉も無視して、タルタリヤはの肩を抱いて万民堂へと足を向けた。睨みあげても意にも介さず、広い璃月港であってもすぐに目的地へと辿りついてしまった。
は辛いものが好きなんだよね」
「いえあの、だから」
「でもさほど大食いではないし…とりあえず黒背スズキの激辛唐辛子煮込みと揚げ魚の甘酢あんかけ、ひとつずつ」
 慣れた様子で注文しているが。…財布を出すより早くぴったりの金額を払っているのは解せない。
 注文したものを放って去るわけにもいかず、野外の机で食事を始める…新月軒の時と違って、肩が触れ合うほど近くに座っているのは何故だ。
 彼の行動が、一般的に見て、女性に対し気があるのを示すような行動であることは、もわかっている。しかし彼がそうする理由がない。
 気のあるように見える行動をしているのは事実でも、あの若さでファデュイの中でも飛び抜けた『力』によって今の地位に上り詰めた彼が、一介の連絡員如きに興味を持つ理由が思い当たらないのだ。
 もしその理由というのが、ファデュイにふさわしいかどうか図るためのものだったりしたら。彼は演技が上手だ。
 とにかくさっさとお暇しようと、いつもならゆっくり味わって食べる食事を手早くかき込んだ。タルタリヤは万民堂で利用される箸の扱いが苦手なので随分とゆっくり食べている。それを確認し、口元を拭いて立ち上がろうとすると─ちょうどそのタイミングで、万民堂おすすめのデザート、杏仁豆腐が机に乗せられた。店員はにこやかに会釈してそのまま店内に戻っていく。男を見れば、にっこりと笑顔で頷いていた。何に対する頷きだと言うのか。
 出されたものを食べないのは、よくない。仕方なく座り直して、杏仁豆腐に舌鼓を打った。辛いものは体があたたまるので好きだが、冷たいデザートも好きである。
「美味しかった?他にも食べたいものがあればどうぞ」
 などとしていれば、いつの間にかタルタリヤの方は食べ終わっていて。
 は最後の一口を飲み込んで、ツンと眉根を寄せた。
「作られたものを無駄にしないために完食しているだけです」
「うん、でも美味しそうに食べてたから」
「…万民堂の食事は美味ですから」
 にこにこと朗らかなままの彼にそっぽを向き、今度こそ席を立つ。失礼します、と踵を返そうとすれば、素早く肩を抱かれ行き先を限定される。
 逃れようと身をよじれば、「嫌なら抱き上げるけど?」と軽い口調で言われてしまう。完全に地面から足を離されてしまえば、より抵抗ができなくなると思えば、どこか逃げられるタイミングを見計らったほうがいいだろう。ジトリと睨みあげながら、引きずられるようにして従った。
「…どこに行くんですか」
「そうだなぁ、秘密」
 人混みの多い璃月を歩く。いつの間にやら歩きやすい形に変わっていたが、それでも肩を抱く手は離れない。向かうのは北国銀行の方ではあるが、宝石屋横の階段は登らなかった。
 不審感が出ていたのか、タルタリヤと目が合いにこりと微笑まれてしまった。普通の女子ならば心をときめかせるのかもしれないが、にとっては恐怖でしかない。
 そもそもは決して彼にいい感情を抱いていない。ファデュイへは女皇様への憧れと忠誠心で入ったが、その後希望したのは『淑女』シニョーラ様の下につくこと。ある程度経験を積んでから、実際淑女様担当の連絡員になったはずが、いつの間にやら璃月への出向と公子担当の連絡員になっていた。その公子タルタリヤが中々国へ帰れないことを理由に彼の家族へ手紙を届け、弟たちと関わり、何より公子本人と関わる中で噂だけの人ではないことは理解しているものの─は、彼に恐れを抱いている。自分の命も惜しまないような戦いをする、彼に。
 公子タルタリヤを担当するにあたって、上からの指示のまま彼を上手く操るために多少は説明を受けている。命を削る武装に、追い求める熾烈な戦い、その性格。かと思えば口元は和やかに笑んでいて、家族からの手紙を読むときは本当に優しい顔をしている。そんな彼が、に対しあからさますぎる態度をとっているのは、正直なところ怖くて仕方がない。
 しかしそれを誰に相談することもできないでいる。女皇様に仕えるファデュイの者なら、自分のことは自分でなんとかしなくてはならないから。
 …考えているうちに、二人は港町である璃月の一番の稼ぎ頭とも言える白駒逆旅にたどり着いていた。慣れた足取りで階段を登り、一つの部屋へと足を向かわせられている。そこは少なくとも、がとっている部屋ではない。そこへ導かれる理由にようやく思い当たって、表情を取り繕うことも忘れて青ざめた。
 肩を抱く手を強く振り払う。男は少しだけ目を開いてから首を傾げた。どういうつもりか、と聞きたいが、緊張が喉を強張らせて上手く息ができない。
「その顔だ」
「…?」 
「その顔がもっと見たいんだよ、俺は」
 一歩ずつじりじりと後退していても、彼の大きな一歩で簡単に距離を詰められる。柱へと追いやられ、右手に顎を掴まれた。眼前にタルタリヤの顔が迫っている。ぎゅっと目を瞑って身構えれば、唇に何かが触れた。逃げようとしても顎と片手は痛いくらいに握られて、ただ唇を噛み締めて時が過ぎるのを待つことしかできない。
「んっ、…!」
「ほら、口くらい開けて」
 がぶりと唇に噛みつかれて痛みに驚けば、僅かな隙をついて舌が侵入する。ぬるぬると口内を這い回り、自由勝手に暴れ始めた。噛んでやろうと思っても顎を掴まれていて、の力では押し返すことはできない。
 腕を握る手を離し、少女の頭へとまわる。首筋を撫で上げ、手指が髪を絡めた。かちゃ、と金属の擦れる音がするが、口の中を蹂躙している男の舌に気をとられて熱があがるばかりで、音の正体が何なのか気が回らない。
 しかし彼の意識がそちらに向いたからなのか、わずかに拘束の手が緩んだのを見計らって強く彼の胸を押す。…意外にも、簡単に離れてくれた。
 満足そうに舌なめずりをしながら、タルタリヤは手元の何かに視線を向けている。その好機を見逃すことは出来ない、恐怖に表情が歪みそうになるのを耐えながら、手すりに足をかけた。
「神の目も持ってない状態でこの高さから飛び降りれば命に関わると思うけど」
「…え?あ…」
 髪飾りがあった場所に手をのばす。解れたみつあみが残るだけで、結い上げた髪はいつの間にか無造作に垂れている。呆然とするをゆるりとした動きで抱き上げて、タルタリヤは部屋の扉を開けた。
 高級旅館の一室。部屋の中は綺麗に設えられていて、けれど滞在期間が長いからか、思いの外荷物が多い。とは言ってもその半分以上は家族へのお土産であろうが。
 恐怖で体が冷えている。部屋に入り後ろ手に鍵を掛けられ、そこでようやく足をついた。肩を抱いて、まるで恋人を招くように歩を進めている。
 は意を決してタルタリヤの腕を振り払った。
「…そういうことをお望みでしたら、そういう施設をお調べしましたが」
「商売女に用はないよ。あんあんうるさくって仕方ない、媚びた喘ぎ声は好きじゃないんだ。それに言ったろ?君の怯えた顔がもっと見たい」
「な、にを…。なら、自分で手頃な方を引っ掛けて来なさい。貴方なら引く手数多です」
「だから俺にとって手頃なのが君なんだろう、
 息を飲む。外へ戻る扉へと後退っているのがわからないわけでもないだろうに、余裕の笑みで眺めながら自身はのんびりと装備を外している。
 はようやく扉に手を触れると、男の様子を伺いながらかけられた鍵に指を伸ばした。
「…こういう契約をしようか、。 今この場から逃げたければ逃げればいい。俺はそれを追う。ああ、安心してくれ、武装は使わない、加減はする…つまり鬼ごっこ、あるいはかくれんぼだ。君の持てる力全て使って逃げるといい。そのつもりなら神の目を返してもいいよ」
「…?」
「ただし俺は加減はしても手は抜かない。捕まえたその場で君を犯してあげる。愉しみだね、君が俺との初めてにどんな場所を選ぶのか興味がある。ちなみにその鍵を開けた時点で契約は成立だ…あれ、行かないの?」
 一見バカにしているとしか思えない提案に、はわずかに眉根を寄せた。たとえ今、彼が一つずつ外していっている装飾品と共に置かれたの神の目を返却されたとしても。
 氷という元素力がタルタリヤの水の元素に有利に働くことが多いとしても。大前提として、では公子タルタリヤの力を振り払うことは出来ない。彼自身それがわかっていて─これはをこの場に留めるための詭弁に過ぎないのだ。
 ただ問題があるとすれば、言葉の通り、が助けを求めて外に出た場合、彼にとって最も愉しく、にとって都合が悪い場所で捕えてくるのだろう。すぐ様にそうならなかったとしても、それは狩りの前の余興でしかない。
 扉を背に俯いたまま、何故こんな状況に陥ったのかと歯噛みした。恐怖から零れそうになる涙をこらえながら思考を巡らすも、表情を保つことに精一杯で何の奇策も思いつきはしない。
 一方で男は伺える表情の僅かな変移を鑑賞しながらゆっくりと衣服を脱いでいた。上はシャツ一枚になると、硬直しているに歩み寄ってするりと頭から顎を撫でる。
「覚悟は決まったかい?」
「……ええ」
 決まってない。そんなもの決まるはずがない。この後予想される行為がもしかしてただの遊びだとか、そういう現実逃避をしかけたが、タルタリヤ自身が「犯す」と先ほど口にした。いつか現れる大切な恋人に捧げるはずのものを、何故この男にやる覚悟を決めなければならないのか。
 しかしどう抵抗しようと、例え今を回避出来ようとも─その運命はもう、変えられないのだろう。であるならば、彼が興味を失うようにすればいい。
 無表情を努めて顔を上げたに僅かに眉を上げた。
「ああ、うん。君なりに頑張って抵抗してくれればいい。今そうやって怯えているのを我慢している顔も気に入ってるんだ」
 どれほど睨みつけても効果はない。肩を抱かれ、しっかりとした足取りでまっすぐに向かうのは予想通りの場所だ。高級旅館ゆえの上質なベッドは体を痛めつることもなくを受け止める。その上からギシリと音を立ててまたがるのは紛れもなくタルタリヤだ。
 上辺だけの優しい、まるで恋人を相手にするような笑顔は、今のにとって嵐の前の静けさでしかないだろう。
 後ずさっても狭いベッドの上。ひたすらに逃げようと考えても何も思いつかない。ただ恐ろしいものが笑顔で近づいてくる恐怖を表に出さないように努めることしかできなかった。
「ああ、でも君がその方向で行くんなら俺もやり方を変えてやらないとね。嫌がる君に無理矢理突っ込んでやろうと思っていたけど。泣き叫ぶまで…いや、泣き叫んでもとことん気持ちよくしてやろう、君が進んで足を開くように」
「な、にを」
 にっこりと笑う男に言いかけた口を閉じた。
 想像したよりもずっと優しい手付きで服を脱がされていく。ファスナーを丁寧に降ろされ、いとも簡単に胸元を暴かれた。憎々しげに見下ろしていれはたりと目があい、顔を背けて不機嫌を表す。先程から何度も腕の拘束を解こうと力を込めているがびくともしない。
 顎を掴まれ唇を合わせる。形を知るように何度も重なり、最後に舌が這った。少しずつ湿った吐息が漏れ、僅かな隙間から舌が侵入するとのそれを絡め取った。顎に触れていた手は下り、前を開けられながらも未だ布が隠していた胸に触れ、掬うように揉みはじめた。
「…ん?」
「っ…み、ないで、」
 長く骨張った男の手指が乳房の形を変え、肌全てを暴こうとしていると、ひとつのことに気付いた。差はあれど全ての人についているはずのものがない。キスを取りやめ視線を向けようとしたタルタリヤに、初めて弱々しく羞恥を帯びた声がかけられた。
 自身、ただ耐えればいいと思って投げやりになっていたが、それはそれだ。コンプレックスとも言えることを知られ、一気に体内の熱が上がる。
 比較的幼い頃から胸の成長が早かったため、周りからの視線や動きやすさからサラシを巻いて過ごしてきた、それ故の弊害だ。タルタリヤは僅かに口角を上げ、ひとつキスを落とした。それから胸に唇を寄せ、丁寧な仕草でそこを刺激しはじめる。
 息が漏れた。不快感と嫌悪しかなかったはずの愛撫に、無情にも体の神経は反応を見せてしまう。強く唇を噛んで声を留めるも、の反応を見ながら成される刺激に首を振る。我慢しなくていいよ、と妙に甘い声で囁いているが、ただ拒否を返した。
 ぐにぐにと指をこすり合わせ、埋没した乳頭を押し出すようにつまんでいけば次第にそれが顔を出す。すぐに引っ込もうとする乳頭に噛み付いて引っ張り出した。ただ神経の集中する場所にたてられた歯に痛みを感じる前に、はひどく融けた声を漏らした。意に反して出た声に咄嗟に口を閉じるも、強い刺激に脳髄が痺れて息が抜けた。
「やめっ、あ、ぁん、ぐっ…」
「普段刺激がない場所だから弱い?…気持ちいい?」
「……っ、あたま、が……おかしいん、ですか。こんなこと…っされ、ても…気持ち悪…ん、ぁっ」
 血が出そうなほど強く唇を噛み締め、屈しない姿勢を保とうとしていても、煽られては否定しなければならない。必死に漏れ出る声を抑えながら言葉を紡いでもタルタリヤは当然その間愛撫を止めるはずがなく、与えられる刺激に声が裏返るばかりだ。やり場のない羞恥を睨みつけることで誤魔化した。
 手のひらが肌を滑る。胸先へ唇を寄せたまま引っかかる衣服を器用に外し、一部の肌着だけ残してすべての衣服をベッドの下へ投げ捨てると、抵抗を見せる脚の間に身を割り込ませ無理矢理に開かせた。
下腹を撫で、何かを確かめるように少し力を込めて更に下へと向かって、フリルのドロワーズの隙間から忍び込む指が恥部をかすめた。
「…っ、ほん…とに、するつもり…なんですか。これ以上は、冗談じゃ…」
「俺はこういう冗談好きじゃないなぁ」
 などと。的外れな返答に歯噛みする。
 タルタリヤは自身の指に唾液を絡めると、熱を持ち蒸れてはいるものの濡れているとはいえないそこに再び触れた。いりぐちをこすり蜜を拡げつつ陰核を押し潰す。不快そうに眉根を寄せるへは時折キスを落として、少しずつ芽を剥いた。
「……っ、ん…っふ、」
「ああほら、噛まない噛まない。血が出るよ、さすがに」
「うる…っさい…っ!はやく、ん…っおわら、せて」
「俺はいいけど。いいの?慣らさないと相当痛い思いするよ。体格差もあるし、初めてだろう?」
 その言葉にカッと顔を熱くする。確かに間違いなくは初めてだ。経験があるならばいいなどということはないが、この男はそれを分かっていて奪おうとしている。憎しみさえ募った瞳で必死に睨みつけるも、タルタリヤは目があってはにこりと笑うばかりだ。
 感情にそのつもりがなくとも、否応なく体は快感を蓄積させていた。体温が上がり、必死に結ぶ唇は呼吸が足りず頻繁に緩むようになっている。もどかしささえ覚える手付きで陰核に触れられ、次第に腰が引けていた。
「腰動いてる。気持ちいいかい?」
「ちがっ…ん、ん…っ!に、げようと…っ」
「ふうん?…俺が予想したよりは耐えてるけど、今更まだ逃げられると思ってるんだ」
 ここから、ではなくあくまでも快感から─ではあるが、分かっているのかいないのか、愉しそうに目を細めている。
「ほら、かなり顔を出してきた。勃起してる」
「…気持ち悪いこと…っ言わないで…ください……っ」
「気持ち悪い?おおよそすべての人体に備えられた機能なのにな」
 手指を戻し、絡みついた蜜を舐め取りながら、タルタリヤはふと何かに気付き己の爪を噛みちぎった。…思ったより伸びていたらしい。
 そのままの体の中へ、指をひとつ侵入させる。親指で陰核を押し潰しながら中を探り始めた。
 忌々しそうに見下ろすの表情の機微を観察し、ゆっくり指をくねらせる。
「…っ、ん…!ぃ、んっ」
「あ、ここ?」
「ひ、ぐ…っ?う、うー…っ」
「こっちかな?」
 ある箇所に触れた途端に身をのけぞらせた様子に舌なめずりをして、身を屈めて抱き込みながらそこをしつこく撫で上げた。内部の敏感な部分に触れられたからなのか、耐えてきた陰核への刺激が溢れたからかはわからないが、どちらにしてもの体はこれで覚えさせられたことだろう。
「大分溢れてきたね。もう挿れたいんだけど、どう?」
「っ、ひ、やめ、やだ、こんな、だめ、」
 挿入する指を増やして、快感へ押しやる力を強める。タルタリヤの服を掴み身を捩って逃げようとするが、その動きは与えられる刺激に余計なものを増やしているだけだった。はくはくと荒い呼吸を繰り返し必死に首を振る。
「あはは、可愛い。いつもの仏頂面より表情豊かな方がいいよ」
「う、るさっ、ひっんっ、ん!」
「もうそろそろイけそう?初めてでイけるなら才能あるね、ちゅーしようか」
 顎を上げさせてまた深く舌を絡ませながら、指を引き抜きごそごそと己のモノを取り出した。襲い来る快感が止まって胸を撫で下ろすを愉しそうに見やり、涼しい顔の下で溜まっていた熱をあてがうと、ぼんやりとキスを受け入れているの中へと勢いよく突き立てる。ある程度は湿潤し快感を蓄積させていても、しっかりと開拓されているとは言い難い場所への侵入は、一瞬だけ彼女の意識を飛ばした。絹を割く痛みに息が止まり、ちかちかと視界が明滅する。
「っ…ん、流石に奥までは入らないか」
「…ぁ、い、たい、いたい…うそ、うそ、やだぁ…」
 今までの生理的なものとは違う涙を零す。そうされることは最初からわかっていたこととはいえ、きっと彼が興味をなくすと祈っていた。戻ってきた意識の中でゆくあてもない手が震えながらタルタリヤの服を握った。
「……そんなに痛かった?…そっか、いや、ごめんね?いまさらだけど」
「ひっ、う、うごかな、いで」
「いや、うん。無理」
 今のには、タルタリヤの表情の下は読み取れない。
 の想像よりも、タルタリヤ自身の予定よりも、随分と丁寧で遅々とした愛撫だった。元々欲を抑えて誤魔化していた中、ようやくここまでこぎつけて、タルタリヤはそれなりに切羽詰まっている。
 …欲はあるし、情もある。問題はその方法が彼女にそぐわない方法だったこと、結局何も伝わっていないことだ。
  半分ほども収まっていないそれを、ゆっくり内壁に擦りつけながら引き抜いてまた奥へと突き入れる。皮膚が裂けたときの血を潤滑油に己の先走りも加え少しずつなめらかな動きになっていった。
「少しだけ我慢しろよ…、」
「んっ、んんっ…」
 卑猥な音はの耳を冒し、のぼせた頭を更にふやけさせた。
 決して気持ちよくないはずなのに、体を揺らされるたびに男から打ち込まれた楔を認識させられ、手放したい意識を引き戻される。
 好きでもない男に脅され犯されて、その上で快楽を感じてしまっているというのは、にとって屈辱しかない。だと言うのに時折頭を撫でる男の手のひらに優しさすら感じてしまって。
「っは、ぁあっ、んぅ…っ」
「声が艶やかになってきたね?」
「うるっ、さい…っひ、んあっ!」
「腰動いてる」
「ちがっ、ちがうっ!」
 先程知られた箇所を重点的にこすりつけられ、抜けるような感覚に口が開く。逃げようとシーツを掴んで身をよじれば、意図せず深く突き刺さりより強い快感が襲った。どうすればこの感覚から逃げられるのかわからず頭が真っ白になって、ぼろぼろと涙が溢れ続ける。落ち着いた呼吸も出来ず、タルタリヤを罵倒する言葉さえ思いつかない。一線を越えないようにだけ、ただ爪を立てて耐えようとした。
、──…」
「っん、んんっ!っは、──…!」
 ごつりと最奥を叩かれ、痛みよりも先に何かが弾ける。一瞬だけこわばった体が次第に緩み、遅れて呼吸が乱れていく。何が起こったのかわからない、全身が震え、男を飲み込んでいる場所がきゅうきゅうと収縮している。呆然としているの額にキスをしながら、タルタリヤは一度だけ腰を押し付けるとゆっくり引き抜いた。白濁が糸を引いて滴り落ち、それを見てまたが息を呑む。
「ぅ、え…?あ、やだ、や…」
「責任は取るから安心していいよ」
「うそ、うそ…っ…もうやだぁ…」
 体力の限界か、それとも現実逃避か。はそうぼやき、身を抱くように丸まって意識を手放した。おや、と僅かに目を丸めながら、タルタリヤは頭を掻いて寝転がり、少女を腕に乗せて眠りについた。