04


 私の村では、毎日おいしいご飯を作ってくださいというのが定番のプロポーズセリフである。なのでアイゼンさんが、よりにもよって私の得意料理である味噌汁を指してそれを言ったことにとても驚いてしまった。他の船員たちはわからないが、聖隷であるアイゼンさんが人間の結婚とかそういういとなみを知らなくても無理はない。なので赤くなる顔を必死に隠してごまかした、例の昼食。
 …なのだが、あの日からアイゼンさんの態度がどこかおかしい。用がないはずなのに頻繁に部屋を訪れるし、港に着いた時は色々な装飾品を買ってきてくれる。

「私何かしたでしょうか…最近のアイゼンさんが何か怖いんです」
「怖い?」
「装飾品を買ってきてくれるのは嬉しいんですが、いつもその、怒りながら渡してくるんです。ほしいとか言った覚えもないので、なんで怒ってるのかわからなくて」
「………」
「だから身に着けていいのかもわからないんです」

 ベンウィックさんが物見当番を終え手持ち武沙汰になったからと、私の部屋へ訪ねてきた。アイゼンさんとは最近どうかと聞かれ、その質問の意図はつかみそこねたもののアイゼンさん関連で悩んでいた事があったので正直に打ち明けると、ベンウィックさんは難しい顔で首を傾げ始めた。

「あー…副長はほら、目つき悪いから…怒ってるわけではないとおもう」
「で、でもコレなんですかって聞いたら『ネックレスだ、見てわからないのか』って…他に何聞いても『見てわからないのか』しか答えてくれないんです」
「副長…」
「アイゼンさんにはいつもお手紙のやり取りをする方がいらっしゃるので、余計に私に装飾品をくれる意味がわからなくって…私、もしかしたらそのうち装飾品をジャラジャラつけたそういうお仕事をさせられてしまうんでしょうか」
「ん!?」

 それはない、とベンウィックさんが慌てて否定してくれるが、私にはそんな結末しか考えられないのだ。彼にはこまめに文通する恋人がいるはずだし、私に好意を持つということはありえない。彼を含めた船員たちの厚意に甘えて出会ってからしばらく経つのに船を降りないことに苛立ちを感じてしまったのだろうか。

「うーん…それはもう副長に直接聞いたほうがいいんじゃないかな」
「でも、わかりきったことを聞くなって言われたら…それにそういう仕事をさせられるってわかってしまっても、海の上じゃ逃げられません」
「うん、、もう副長に直接聞こう?そういう仕事をさせられるってことだけはないから」

 困った顔でアイゼンさんを呼びに行ってしまったベンウィックさんを見送り、私は座っているベッドの上でため息をつく。こんなことになるのなら、彼に止められてももっと早くに船を降りるべきだった。彼に買ってもらったスカートの裾を握りしめ、何度目かの深いため息を吐き出した。





05



 そういう仕事をさせるつもりは一切ない、とアイゼンさんはやはり不機嫌そうに答えた。

「なら、あの装飾品は…」
「お前へのプレゼントだ。気に入らなければ売るなり捨てるなりすればいい」
「そ、そうじゃなくて、どうして、その、私に」

 彼には贈り物や手紙を送る相手がいるはずだ。そう思ってさらに問えば、またアイゼンさんの眉間の皺が深くなる。

「…あの手紙の相手は妹だ。わけあって一緒に居られないから、詫びとして送っているだけだ」
「え、あ…妹、さん」
「そうだ。俺が何かと買ってきてはお前にやるのは…、お前に似合うと、渡したいと思ったからだ」
「……どう、して」

 どき、どき。自分の鼓動が早くなるのがわかった。
 バンエルティア号に拾われてからしばらく経っている。自分を助けてくれて、気にかけてくれるアイゼンさんを少しずつ好きになっていた私は、けれど手紙の相手のことや年齢差、人間と聖隷という種族の違いを考えては落ち込んでいた。自分が拾ったから面倒を見ているだけだろうと思っていたのに、そんなことを言われてしまっては―期待してしまう。
 でももし違ったら。自分の思いあがりだったら。近くに居ない妹の代わりにしているだけだとしたら。期待と不安が綯い交ぜになった胸中で、アイゼンさんの答えを待ちながら彼を見上げた。アイゼンさんは鋭い目つきを気まずそうに緩ませて視線を泳がせているだけで、一向に口を開かない。

「………妹の代わりにしているわけではない」
「…!」
「俺はお前を守るつもりでいる。お前が…好きな人を見つけて、そいつに守られるようになるまでは」
「え…?」
「俺は死神の呪いを持つはた迷惑な聖隷だ。お前を独占することでお前がどんな目に合うかわからない。俺は…ただ遠くで、お前を守る。お前を、守りたいから」

 泳がせていた視線を私に戻して、しっかりとした強い眼差しと声でアイゼンさんはそう口にした。言っている意味が上手く理解できず呆然としていると、またアイゼンさんは視線をそらしすぐに踵を返していった。引きとめようにも考えがまとまらず、言葉が出ない。
 部屋の扉が閉まり、一人取り残される。ベンウィックさんにアイゼンさんを呼んでもらって不安に思っていたことを聞いたはいいものの、まさかこんな展開になるとは思わなかった。
 きっと、彼が私をからかっているのでなければ、おそらくアイゼンさんも私を好意的に思ってくれている。けれど不幸をもたらしてしまうという彼の聖隷としての加護のことを考え、例えば恋人同士とか、そういう関係になるつもりはないと、いうことなのだろう。ベッドに腰を抜かして座り込み考えついた彼の言葉の意図に、私は唇を噛み締めた。

「………私は、」

 それでもいい。…と、胸を張って言えるのだろうか。
 恋をするなんて初めてで、つまり人を本当に愛することがどういうことかなんてわからない。
 ただ今わかることは、彼が自分に背を向けたことが、酷く悲しいということだけだった。





06


「で、アイゼン、お前に手は出したのか?」
「突然下世話な話をするんじゃねぇ」

 別大陸にはたどり着けていないものの、サルベージでいい宝を発見したアイフリード海賊団はこの日ちょっとした宴を開いていた。夜も深く、は眠気に負けて最初の食事を振る舞った後寝室へ戻りすでに眠っている。だからなのか、アルコールが入って多少機嫌よく口が軽くなっている男達だけの空間。むさ苦しいことこの上ないが、華だとを無理に輪へ入れればどうなるかわかったものではない。の寝室へ繋がる扉の近くを陣取って宴をしている甲板から船室へ戻ろうとする者を厳しく監視していたアイゼンに、案の定赤ら顔のアイフリードが肩を組みながらそんな話題を投下した。他の船員達も賑やかに話していたというのに興味津々にそちらへ視線を向けた。
 どうなんだ、と肘で突かれる。心水の注がれたグラスが揺れ、水滴がはねた。

「どうもこうも、手なんか出すわけねぇだろう」
「なんでだよー、船唯一の女と両思いだってのに手を出さないヘタレがいるかよ」
「…俺はアイツへの想いを認めているしアイツの好意にも気づいているが、だからってどうすることはない。今はまだ何もねぇが、下手に加護が働いたら困る」

 アイゼンにとって一番の問題は、自身の聖隷としての加護―周囲に不幸をもたらす死神の呪いだった。長い旅路でそれを解く方法はついぞ分からなかったし、今はもうわざわざ単身探しに行くこともなくなった。だからこそ、今はバンエルティア号全体に及んでいる死神の呪いが個人に集まればどうなるかなど予想できない。種族を越え男女として愛し合う事ができた時、アイゼンはを何よりも愛おしく思うことだろう。それはつまり性として彼女へ無意識下に加護を与えるということ。普通の聖隷ならば問題無いが、アイゼンのそれはあまり喜ばしくないことだ。さしものアイゼンも、聖隷であることよりも男として、一線を超えてしまえば自制できる自信がなかった。

「今が一番美味そうな時期だろうになぁ」
「気色悪い言い方をするな。性欲なんぞ発散しなくても死にはしない」
「性欲もそうだがお前、見ててムラムラ来ないのか?船に乗ったばかりの頃こそまだちんちくりんのガキだったが、そろそろ食い時だろう」
「だから気色悪い言い方をするんじゃねえ」

 睨みをきかせながら呆れのため息を付いて心水を口にする。アイフリードたちはつまらなさそうに唇を尖らせながらつまみを食べながらまた騒がしく喋りだした。
 グラスの水面を見つめながら、アイフリードの言葉を反芻する。がバンエルティア号に乗って一年近くが経ち、年齢や見目もそう変わっていないはずなのに彼女は随分大人びてきたとアイゼンも思っていた。子供のような船員たちの相手をしていて母性が芽生えたのか、ちょうど少女から大人の女性へ変わる時期だったのかはわからない。アイフリードの言うとおり、アイゼンの方にそんなジレンマがなければ、千年近く生きてきて培われた肝っ玉で堂々とを自分のものにして早々に手を出していただろう。聖隷であっても人間の傍で過ごしていた者として、人間らしい感性を持っている自覚もあるのだから。
 だが大切に思うからこそ、彼女のことを思うからこそ一線を超えるつもりはない。船の上という限られた人口の狭い世界で彼女が自分に全てを捧げる必要はないし、今まではアイゼンが許可をしなかったからと言ってもそれを無視してどこか住みたい場所や本当に愛しい人を見つけるかもしれない。そうなってしまえば、彼女を幸せにすると宣言出来ないアイゼンにできることは何もないのだ。

「…愛ってのはな、アイゼン」
「あ?」
「お互いに愛し合っている人となら、どうなってもかまわないって、思うもんなんだ。たとえ不幸になろうと、たとえ死に向かおうと」

 酔いが回ってきたのかやけに静かになったアイフリードが、ぽつりと言葉を漏らした。

「そりゃあ自分のせいで相手が死にでもすれば後悔するだろうし自分を許せなくなるだろうさ。だがそんなのは、自分が関わっていようがいまいが後悔するし自分を責めちまうもんだ。お前が妹と一緒にいると妹が危険な目にあうから一緒にいられないっていうのと、お前が強く想うことでが危険な目にあうかもしれないから関係をあやふやにするってのは、似ているようでぜんぜん違う。家族の愛と、恋人同士の愛は、種類が違うんだ」
「………」
「お前の妹に対する愛も、に対する愛も本物だろう。どちらも守りたいから距離をとる。でもどうだ?お前、が船を降りたらどう思う」

 グラスを揺らしながら軽い口調で、だが真剣な眼差しでアイゼンに問う。他の船員の馬鹿騒ぎをBGMに、アイフリードの瞳を見返した。

「………降ろさせない、だろうな、俺は。どんな理由を付けてでも、バンエルティアに縛り付ける」
「だろう?離れなくちゃいけないって思っていても離れたくない、触れちゃいけないってわかっていても触れてしまいたい。それが全てなんだよ。理性を押しのけて本能で求めるんなら、もうそんな外面無視しちまえ」
「……だが、はどうなる。俺が我慢しなくなったところで、がそうまでして俺と共にありたいと思っていなければ意味が無い」
「そう思わせるんだよ。確かには船の外のもっとずっと広い世界を知らない。外を知って外に出ようとも、それでも一番に想っているのが、誰よりも強くのことを愛しているのがアイゼンだと教えてやればいい。好きな女を手に入れるのに、手段なんか選んでる余裕はねぇぞ」

 残っていた心水を一気に煽り、手を叩いて「俺はもう寝る」と笑顔で甲板を去っていったアイフリードを見送った。
 自分よりもうんと年下だが、人と関わって生きていた年数は―その密度は、きっとアイフリードのほうが上だ。情けないなと自嘲して、アイゼンもグラスにたまっていた少しの心水を飲み干した。





07

 最近避けられている、とアイゼンは自覚していた。曖昧なままの関係を続けると、それでも想っていることを告げた後からだ。相変わらず味噌汁は作ってくれるし普通に会話もするのだが、まず視線が合わない。は怖い怖いといいながらも相手の目を見て会話をする人間だったのにも関わらずだ。そしてその会話時間が短い。なにかと理由をつけてはすぐに話を切り上げるのだ。

「…チッ」

 慌てて走り去るの後ろ姿を見やりながら舌打ちする。明確な関係にならないよう牽制したのは自分だというのに現状に納得できていない事に、そして避ける自身にイラつきを覚えていた。何より本能と理性で揺れるどうしようもない矛盾に、永く生きていてもいい案が浮かばず頭を抱えた。
 相変わらず港へ降りれば髪飾りや服を買い、妹へ手紙を送る合間にへ渡しても、困ったような苦笑いでそれを受け取るだけで以前と違い身に付ける様子はない。このままでは穢れてしまうと首を振って何も考えないように努めるが、どんなものであれ欲望はそう簡単に抑えられないもので。数日の間、アイゼンは何度もため息をついていた。
 夜になり休息するために海上で錨を降ろし停泊する。この日の見張りはアイゼンであった。物見台の上で濃い隈でより印象悪くした鋭い目つきで空を睨みつけ、同時に辺りを警戒する。ふと甲板に気配を感じ視線をやれば、表情は見えないが自信なさげな足取りで船の端へ移動するを見つけた。こんな時間に何をやっているのかと行動を観察していると、ポケットから取り出したもの―いつぞやにアイゼンが贈ったペンダントを眺めながらため息をついているようだった。それも一度ではなく、何度も。
 そのペンダントは、まだ身に着けたところを見たことがない。単純に気に入らなかったのかとも思ったが、見ている限りでは単にアイゼンを避けているのと同じ理由だろう。

「私、どうしたらいいのかな…。アイゼンさんはどうしたいんだろう」

 曖昧な言葉で彼女を縛り付けながら、堂々と抱きしめることはない。そんなアイゼンの行動を理解しかねているようだ。アイゼンも酷い扱いをしている自覚はあるが、簡単に解放してやるつもりはなかった。

「やっぱり船を降りるべきなんだよね。アイゼンさんから離れて、自立して…アイゼンさんがいなくても生きていけるようにならないと」

 その呟きにアイゼンは息を飲んだ。そして急速に理解する。それはいけない、と。
 そんな行動は許さないと言ってしまえば、彼女はますます混乱し、悩み抜いた果てに穢れてしまうことだろう。そうなっては取り返しがつかない。アイゼンは物見台から飛び降りのそばへ降り立つと、驚く彼女に歩み寄り強く抱き締めた。
 しかしそれは弱々しくも拒否される。

「やめてください、」
「…」
「どうしてこんなことするんですか…私、もうアイゼンさんがわかりません」

 想い合うつもりはないと拒絶したのはアイゼンの方だ。泣きそうに顔を歪めて視線をさ迷わせる。彼女の拒絶を無視することは簡単だが、今はまだその時ではない。顔を優しくつかんで正面に固定し、身を屈めて目線を合わせてゆっくりと口を開いた。

「すまなかった」
「……」
「自分のことばかり考えて、俺だけが我慢すればいいと思っていた。…お前も我慢して悩まなければならないのに」
「………」

 唇を噛んで涙をこらえるに、自分のできるかぎりの優しい声を聞かせる。どうか口下手な自分の想いが届きますように、と。

「普通なら好きな奴の幸せを願うだろう。だが俺はお前を幸せにすることが出来ない。お前が俺とともに不幸せになってもいいなら…俺は、お前と共に生きたい。少なくとも俺はお前を不幸せにしてでも、これからを一緒に生きたいと思っているんだ」
「アイゼン、さん」
「今ならまだ引き返せる。お前が普通の、なんの危険もない生活を送りたいなら、俺はこの想いを断ち切る」

 お前はどうしたい、と最後に零して沈黙を作った。は困惑したまま何かを言葉にしようと口を動かすが、定まらず結局黙り込んでしまう。アイゼンはただ答えを待つことしか出来ない。彼女とともにありたいという願望と、そうするべきではないという理性がせめぎあい、アイゼン自身もそれ以上の言葉を発せられずにいる。

「…私、は。私には、まだそんな事、決められません…」
「……そうか」
「私、だって、戦えないし、馬鹿だから、アイゼンさんにいっぱい迷惑、かけます」

 ついに涙をこぼしながら話しだすの言葉を、一言一句漏らさず聞き取るためじっと見つめた。引きつる喉を落ち着かせようと深呼吸するの肩を撫でる。

「まだ子供で、アイゼンさんは聖隷で、私、」
「ああ」
「…でも、私を助けてくれたアイゼンさんが、好きで、どうしたらいいか、わからなくて」
「……」
「こんな気持ちはじめてだから…わからないんです。そんな覚悟を持てる自信も、ありません…」
「……ああ」

 幼い少女には酷な選択だったなと自嘲して、から手を離す。死神である自分が、なんの取り柄もなさそうなただの少女と愛しあうなど最初から無理な話だったのだ。

「でも、私は、アイゼンさんへの気持ちを、…アイゼンさんの気持ちを、なかったことになんてしたくないんです」
「…?」
「今はまだ、胸を張って不幸せでもいいなんてこと、言えません。だから、アイゼンさんがもう少し、待ってくれるなら」

 踵を返して背を向けたアイゼンの服の裾を掴み、視線を合わせないまま言葉を続ける。涙声は次第に強い芯を持ったものに変わっていた。

「…私が強くなって、アイゼンさんとちゃんと寄り添えるようになるまで、待ってくれるなら、私は、アイゼンさんと一緒にいたい」

 裾を掴む手に力が込められる。首だけ振り返れば、俯き耳を赤くするがたった一歩後ろの距離にいた。
 思わず、といったほうがいいのだろうか。感情のままにを引き剥がし腕の中へ掻き抱く。驚き離れようとしたも、硬直させていた身体から力を抜いておずおずとアイゼンの背に手を回す。

「この先、お前は俺と一緒にいることで危険な目に合うだろうし、悲しいことや嫌なことをたくさん体験するだろう」
「……けど、でもそれって、普通のこと、ですよね?」
「何?」
「確かに度合いが違うかもしれないし、数が多いかも…でも、アイゼンさんと離れて生きていても、きっと危険な目にも悲しいこと嫌なこと、あると思うんです」
「……」
「…だったら、私、やっぱりアイゼンさんと一緒に…、一緒に、乗り越えて行きたい」

 だめですか、とアイゼンの胸に顔を押し付けたまま言うに、思わず笑みを零す。

「確かにそうだな。…普通普通と言いながら、俺は普通を知らない。 なぁ
「はい」
「好きだ」

 びくりと身体を震わせた後、は静かに体を離しアイゼンを見上げた。瞳は潤んで、顔は赤く眉尻は引き下がっている。「私も好きです」と小さな唇で紡ぐと、恥ずかしそうに微笑んだ。アイゼンはその唇に噛みつき、驚くの頭を抑えつけて何度も口付ける。性欲の発散など必要ないと思っていたのに、なるほどこれはただの性欲とは違うなと納得する。
 頭を離し腰を抜かしたを抱き上げる。少し怯えたようにまた視線を彷徨わせるをからかうように笑いかければ、悔しそうに唇を尖らせて顔を逸らした。

「安心しろ、今日はここまでだ。何処で誰が見ているかわかったもんじゃねぇからな」
「え、」
「また今度、ゆっくりとお前を手に入れる」

 もう一度額にキスをして、を自分の寝室へと運びこんだ。