Fate:Catalfining
フェイト・カタルフィニング

 
 
148:25:22



 その時、私はちょうど外へ出ていた。
 倉庫街での一戦の後、全陣営ピリピリしているというのにまたマスターを一人残してプリーストは夜の街へ遊びに行こうとしていたから、それに付き合うようなつもりで一緒に街へ繰り出していたのだ。
 お仕置き代わりに昨日食べた麻婆豆腐を美味だと言われて戦慄を覚えたり、ゲームセンターで自分のサーヴァントの幸運値に引いたりしていたのだ。
 そうしたら。
 …なんと、寝泊まりしていたハイアットホテルが何者かによって爆破されていた。
 無惨にも高級ホテルは倒壊していた。犯人はおそらく魔術師殺し―基衛宮切嗣だと思われる。
 あのホテルには何故か命を狙われているだけではなく、先の戦いで負傷させられた槍の持ち主であるランサーとそのマスターが居る。
 セイバーに怪我をさせたのはプリーストなのだが―そこは気にするまい。

「……」
「どうするんだ?」

 プリーストに荷物を持ってこさせて近くの公園で足を組む。戦利品とも言えるお菓子たちをもしゃもしゃと消費しながらそう聞いてきて、思わずため息を付いた。
 正直新しいホテルに泊まれるほど手持ちはない。ホテルは先払いだったから、本来ならまだあと数日分宿泊できるのだが致し方ない。
 かといって公園で寝るというのは…サバイバルはしたことがあるが、少し嫌だ。
 と、そこでやっとひと通り菓子を片付けたプリーストが魔術で出した水で手を洗いながら次の言葉を吐き出した。

「場所さえあれば屋敷一つくらい作れるが―どうする?」
「……じゃあ、良い感じの場所を探して工房一つ作ってちょうだい」

 できるのなら頼る以外手立てはない。一寸悩みはしたものの、即決した。
 一方頼まれたプリーストはやけに笑顔で頷いて、その場を去った。



  
 
143:50:25



 ―さて。
 いくら時間がかかるかはわからないが、プリーストが戻ってくるまでの時間、一体どうしようか。
 この公園で待っていろと言われたわけでもないし、散策するのもアリだが。
 途中自販機で飲み物を買ったりはしているがとても暇だ。
 目の前の川と大橋を眺めながらベンチに座っている。ある程度の地形を把握しているとはいえ、わかっているのは大きい建物や場所くらいなため下手に出歩くわけにも行かない。なによりサーヴァントが付き従っていないから心もとない。

「………」

 ふぅ、と溜息をつく。時間は五時か六時頃だろうか。夏ならば夜が明けている時間だ。いくつかの気配があるが、殺気も隠れている様子もないからおそらくは関係のない一般人だろう。
 先ほど買った缶ジュースを飲み干して、ごみとなったそれをゴミ箱へ放り投げる。
 と、ちょうどその時。
 わずかに不自然な風が吹いたかと思うと、その場に女性―自分のサーヴァントが姿を見せた。

「すまない遅くなったな。外装に凝っていたら時間をかけすぎてしまった。移動しよう」
「…ええ」

 そこまで時間のかかる、何をしてきたのだろうか。
 外装―?適当な穴倉でも見つけて認識阻害やらなんやらかけるだけだと思っていたのだが、どういうことだろう。
 その謎は、件の場所に案内されて潔く理解した。
 建っていたのはまさしく豪邸。否、一人で住むにはあまりにも不釣り合いな程度の大きさの洋館だった。

「…どういうこと?」
「ん?」

 プリーストは心底不思議そうに首を傾げている。何に対して苦笑されているのかわかっていないらしい。
 工房を作れと頼んだはずだが、何故このような大きな家になっているのか。

「否、はじめは入り口から別界の屋敷内の小部屋につなげ、そこから地下へ続く階段を作ったのだが扉の装飾に悩んでな。あれやこれやとしているうちにそも屋敷の外観に合わせるべきだ、と結論づいたのだ。そうして小さな家になったのだが、玄関を豪勢にしすぎてな、小屋には合わん、と小屋の方を屋敷に強化したのだ」
「………」

 絶句。
 満足行くものになるまで改築していたら時間がかかった、らしい。
 どうにも突拍子もない性格が楽なのか苦なのか微妙なところだ。

「…こんな屋敷を作られても、定住するわけじゃないのよ?すぐ解除できるものじゃないと困るのだけど」
「安心せよ、建物があるのはこの世界ではなく私が得意とする世界。神の時代ほどの魔術師でもなければまず気づかれんし、私か貴様の許可があるものしか入れん。移住するのなら入り口を移動するだけでいつでもこの家に来れる。ちなみに家賃や光熱費などといったものもないぞ?いるのはせいぜい魔力程度、電気の代わりに魔力があれば常時快適に過ごせる。金に困っているという程でもないようだが、定住する場に困っていたのだろう?私からのささやかな贈り物だ」

 長ったらしい説明をひと通り終えた後、得意げな顔でプリーストは胸を張る。いくら金のツテがあるとはいえ毎日悠々自適に暮らせる余裕はなかった。この中で籠もれば安心して暮らせる―そう言う自分のサーヴァントを、思わず見なおしてしまった。

「優しい、というか…すごいのね」
「ふふ、褒めても今は何も出せんぞ?」

 手を引かれ中に案内される。邸内もやはり豪華な作りで、「貴様の趣味がわからなかったから」と家具の類は置かれていないが、魔術的な細工をされた用の部屋にはシンプルな机と椅子、天蓋付きのベッドがあった。

「満足か?」
「―ええ、それなりに。ありがとう、プリースト。少し大きすぎるのが寂しいところだけど、あなたの加護があるなら羽根を伸ばして安心できそう」

 プリーストはにこにこと笑んだ後の頭を撫でる。
 同じ女性だが、やけに安らげる力が彼女にはある。

「とにかく今日は寝るといい。適度に睡眠をとっていたとはいえ、命を狙われ過ごしていたのなら熟睡はしづらかったろう。この屋敷ならば私が貴様のサーヴァントでなくなっても同等の効果を保証する」

 優しい笑み。私は用意されたベッドで、久方ぶりの安眠についた。






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