139:13:25「―ろ。 起きろ、」
真っ白なまどろみから意識を浮上させたのは、自分のサーヴァントの声だった。
少しだけ間をあけて返事をすると、自分の眼鏡をかけ直される。素直になされるがままになって、ようやく目が覚めた。
何事かと問えば、どうやら教会からお呼びがかかったらしい。と言っても達だけではなく、この聖杯戦争に参加する全陣営に、だが。
どうする、とプリーストが用意した冷たい水を口に含みながら寝ぼけた頭で考える。
「…私が直接出向くわ。使い魔とか作るのも面倒だし…」
「大丈夫なのか?いや、危険はないだろうが」
「構わないわ。質問タイムを設けてもらって、聞きたいこともあるし」
使い魔ではそれが出来ない。
そういえば、プリーストはそうかと苦笑して頭を掻いた。
「私からの呼び出しに即座対応できるようにして、それ以外は自由に過ごして構わないわ」
「! おお!ではそうしよう。何かあったらすぐに読んでくれ!」
面白いほどに顔を輝かせてそう答えた。そしてすぐに扉から消え、玄関が勢い良く放たれた音が聞こえる。面白いサーヴァントだ。
138:15:37「今、聖杯戦争は重大な危機に見まわれている」
この聖杯戦争の監督役である神父―言峰璃正は、粛々と言い始めた。
「キャスターのマスターは、昨今の冬木市を騒がせている連続誘拐事件の犯人であることが判明した。
よって私は、非常時における監督権限をここに発動し、暫定的ルール変更を設定する。
"全てのマスターは全ての戦闘行動を直ちに中断し、各々キャスター殲滅に尽力せよ"。
そして、見事キャスターとそのマスターを討ち取ったマスターには、特例として追加の令呪を寄贈する」
言峰神父はそう語る。チームなどを一時的に組んで倒した場合は各マスターに一つづつ、など細かい説明を終えた後、その教会の礼拝堂にいるたった一人を視界の隅に入れた。
「さて、質問があるものは今この場で申し出るがいい。―もっとも、人語を発音できるものに限らせてもらうがね」
してやったり、というような笑顔で言峰神父は語る。
には問いたいことがあり、だからこそ生身のままで来たのだが、他の参加者に聞かれるのは少し都合が悪い。そのため今の話を聞いていた使い魔たちが去るまで黙りこんでいたのだが、一向に気配が消える様子はない。
溜息を付いて、は手を浅く上げた。
「キャスターの情報を公開してはもらえないのかしら」
「―こちらは、キャスターのマスターが件の誘拐事件の犯人であるという情報しか入手していない。それ以外の情報は、各自で調べたほうが差を付けられるというものだろう」
「なら聞くけれど、一体どうやってその情報を仕入れたのかしら。その足が誰か、なんてことはスルーしてもいいけれど、キャスターと誘拐事件の犯人とを結びつける確証を得たのでしょう?
サーヴァントがいればサーヴァントであるキャスターは捕捉出来ても、もしマスターが別行動していればサーヴァントと接触しない限りこちらでは判断しようがない。見た目や予測できうる限りのキャスターの真名ないし能力。それらはあなた達がつかんでいないはずがないでしょう、キャスターとそのマスターの関連性を断定させたのだから」
神父は口を結んだまま語らない。
「…ま、いいけどね。こちらは令呪に興味はないし、魔術の秘匿もどうでもいいから」
そう言って、は立ち上がり出入口へと向かった。
何やら言いたげな顔をしているが、神父はそれ以上何も言わなかった。バサバサと一部の使い魔が羽を動かして去っていく。
「ああ、そうだ。ずっと思っていたのだけど、どうして私は代行者にまで狙われなくちゃいけないのかしら」
「―何?」
「一応封印指定を受けているのは知っているから、執行者に狙われるのはわかるけど…数百年前ならまだしも、今の私達はひっそりと生きているわ。特別な研究をしているわけでもなく人に手をかけ魔術の秘匿とやらに引っかかっているわけでもない」
またも神父は口を噤んだ。沈黙の中にらみ合いが始まるが、音を上げたらしいが再度溜息を付いて扉を押し開ける。
「…今は聖杯戦争の最中。あなたがマスターである以上は手を出しはしない、それはこの言峰璃正の名の下保証しよう」
そんな言葉を聞きながら、は教会を出た。
135:25:36「キャスターの討伐命令?」
「ええ。魔術の秘匿がどうたら…」
屋敷に帰ってきてつかの間、プリーストは菓子が入った紙袋を片手に戻ってきた。
呼び出しの内容は何だった、と菓子をもしゃもしゃと咀嚼しながら問いかけて来たので、さきほど監督役から聞かされたことをそのまま要約して伝えれば、ほぅ、と思案する顔つきをしながら指をなめた。
「キャスター…ああ、あれか」
「知ってるの?」
プリーストは頷く。
いつだったか遊び歩いている時住宅街に迷い込み、そのまま散策しているうちに虫の知らせを感じ―その先に、惨殺された一家がいたと。
「そういえば、あの時逃した子供はどうなっただろうな…」
「そんなことより、なにか情報はないの?」
「む、キャスター討伐には参加しないのではなかったか?」
確かに、褒美である令呪や魔術の秘匿も個人的には興味がないのだが、この戦争に参加した根本的なことを考えると、子供の大量誘拐および殺人という被害は見過ごせないのだ。
偽善だけれど、とは苦笑する。
「偽善結構。救いたい、その心がなければ何も始まらないさ。さて、そうさな、覚えている情報と言えば―」
顎に手をやりながらプリーストが語る。
マスターの名前は『雨生龍之介』。キャスターは蛙顔と表現するのが一番容易な見目をしており、プリーストを超える長身、男性。
話せるだけの理性はあるが、こちらの言葉を真に理解できない程度に気が狂っている。
「後は―確か―そうさな。宝具かどうかまでは判断しかねるが、おそらくあいつが喚びでもしたのだろう、何かこう…形容しがたい…触手があった。キャスター自身は魔術らしい魔術を使わない」
「…キャスター自身が魔術師として名を馳せた英霊でないのなら、そういったアイテムを使った…とかの伝承がある人物かしら」
「そういえば本を持っていた気がするな。見目からして人皮の」
「なら、それが宝具である可能性は高いわね。触手を召喚したのなら、その媒体は書物であることが多い。見当はずれでも、とにかく持っているアイテムやそれらしいものを破壊できれば倒すのは容易ね。できる?」
「可能だと思うぞ。しかし、我々の目的はそれではないのだろう?」
ニヤリと笑う。
それに返すようにも口角を上げると、もちろんと答えた。
がキャスターとそのマスターの討伐の一端を担おうというのには、別の理由がある。
プリーストの得ていた情報をすりあわせて、マスターである雨生龍之介には一度会ったことがあると確信したのだ。
何日ほど前のことかは覚えていないが、日本に来てこの近くを通った時に追いかけてきた妙な青年。
今はない頬の傷を撫ぜる。別段恨むほどのことでもないが、直後に気味の悪いものを見せられた腹いせ。
―せいぜい、一発くらい殴ったって構わないだろう。
「用があるのはそのマスターの方。令呪という褒章があるなら、他の誰かが一人くらいはキャスターの討伐をする。私達―私は、マスターの雨生龍之介に一泡吹かせてやりたいのよ。どうするかは、任せるわ」
「その言葉を待っていたぞ。私は我らの意思でなかなか手が出せんからな」
サーヴァントであるからなのか、ある意味での制約があるらしいプリーストの台詞は聞き流して、二人は屋敷を出た。
131:20:44 鬱蒼とした森の中。
大きな手、大きな黒い服を来た男の人。
体の中を何かが蠢く。
怖い。怖い。怖い。
何が起きているのか分からない。
どうしてこんなに痛いのだろう。
どうして、僕/私はこんな目に合わなくてはいけないのだろう。
誰か。
―誰か。
たすけて。
一人の少年がそう願った時、目の前に"それ"は現れた。
「気を強く持つのだ、少年。これを切り抜けられれば、君は誰よりも勇ましい男になるだろう」
希望の光。
日はまだ現れていないのに、逆光のようにその人の顔は見えない。
こちらに手が伸びている。
地獄にたらされた蜘蛛の糸のようだ。刺激はないが、とてもまぶしく、きらびやかで――
大きな手、大きな黒い服を来た男の人。
体の中を何かが蠢く。
怖い。怖い。怖い。
何が起きているのか分からない。
どうしてこんなに痛いのだろう。
どうして、僕/私はこんな目に合わなくてはいけないのだろう。
誰か。
―誰か。
たすけて。
一人の少年がそう願った時、目の前に"それ"は現れた。
「気を強く持つのだ、少年。これを切り抜けられれば、君は誰よりも勇ましい男になるだろう」
希望の光。
日はまだ現れていないのに、逆光のようにその人の顔は見えない。
こちらに手が伸びている。
地獄にたらされた蜘蛛の糸のようだ。刺激はないが、とてもまぶしく、きらびやかで――
+
「見つかった?」
「いや―魔力の残滓的にも、キャスターは工房にいないようだな。魔術的な隠蔽も無ければ、いるかいないかの細工もない。マスターの方もここにはいないだろう」
「…そう」
二人でビルや屋根を伝いながら街中の魔力を探したが、それらしいものはみつからなかった。
ホテルで過ごしていた時に見たニュースの情報では、マスターこと雨生龍之介は痕跡を隠すのがめっぽう上手い、らしい。キャスター自身は魔法的生物であるとはいえ、その残滓をたどっても見つからないということはどこかの結界内に逃げ込んだか、綺麗に洗い流し適当に散歩をしているかというところだろう。
「と、すると―この地を覆っている森にある結界か。あの中に逃げたか、あの結界の主に用があるかのどっちかだな」
「結界の主―確かアインツベルンが陣取ってるんだったかしら。キャスターが…用?」
ふむ、とプリーストが考えこむ。は言葉を続けない彼女を一瞥して辺りを見回した。
「…例えば。結界内なら、その結界の主には気づかれてもそれ以外には気づかれにくい―キャスターが魔物を召喚するなら、大きなものを時間をかけて召喚しにかかったとか、かしら」
「アインツベルンはセイバーだったか…近接得意な相手の管轄内でそうするなら、何か時間稼ぎを用意していそうだな…、行こうか、」
プリーストは今回の件に関わることに相当乗り気なようで、やけに前へ前へと進みたがる。
人智を超えたサーヴァントなら、小さなことに頓着しなさそうだが。
「私には私の、我らには我らの役割がある。私はそれから外れた身、自分でできることならそうするさ」
―とは彼女の言葉だ。
そうこう思い返しているうちに郊外の森の上空へとたどり着いた。「ここからでは見えんな」強力な結界が敷かれているようで―いや、なくてもこれだけ離れていれば肉眼では見えないだろう。
お互いにそう納得して、多少の危険はあるだろうがその森へと侵入した。
+
ちょうどその頃、キャスターはセイバーを訪ねていた。魔をその体に宿らせた、土産を用意して。
―何か悪しき気配があるわけではない。属性やこちらとしての意識はどうあれ、あちらに悪意はないであろうから。
それを認識できるまで近づいて、やっとは顔をしかめた。
一方キャスターを見定めるように眺めている彼女は、ふむ、と小さく唸る。何やら対処しかねているようだ。
「では、私が子どもたちを親の元へ案内しよう。どれほどかかるかわからんが…大丈夫か?」
「今はキャスター討伐のため停戦になってるし、よほどなら魔術を使うしかまわないわ」
「ふむ…では風の精でも預けておこうか。では」
プリーストはさらさらと溶けるように粒子となり霊体化した。
しんとなった森の中で、キャスターの動向を監視する。―すると、こちらに気づいたのかキャスターの飛び出た目がぎょろりと動いた。
自身がなにか対応するよりも先に、キャスターの召喚した怪魔の触手が伸びていた。
「―ッ」
「はぁッ!」
腕に絡みつきかけたそれが、何かによって叩き斬られた。反動によって木の上から落ちるが―それも、触手を斬った人物が上手く受け止めてくれたようで、怪我なく地面へ降り立つ。
「あなたでしたか。キャスター討伐のため停戦となっている今、ひとまず命が無事で何よりです」
「…どうも、セイバー」
真面目な顔をしてこちらの安否を気にしている様はまさに騎士様。多少は女としてのユメがある身としては、それなりに見惚れるものだろう。
それはさておき。セイバーの眼の前に相見えたキャスターは、―正直判断はしにくいが声からして歓喜しているようで、片手に禍々しい本をしっかりと持ったまま腕を広げて何やら騒いでいた。
先ほどを助けてくれた人物ことセイバーが、を背に回しながら剣を構えた。
「…部外者のせいで多少予定が狂いましたが。どうですかな、この惨状は。痛ましいでしょう?」
キャスターは転がる肉片を見下げながらそう高らかに言う。
何人かの子供の質量分の肉が転がっているが、最初に視認した子供の数よりは圧倒的に少ない。
…全ての子らの対処を出来なかった自分のサーヴァントに、叱責という名の八つ当たりをするしかあるまい。
「私が憎いですか?―えぇ憎いでしょうともね、神の愛に背いた私を断じて許せないはずだ」
「その子を離せ、外道!」
セイバーは感情を抑えながらもキャスターに怒りを見せる。―崇高な騎士様、が彼の言う"ジャンヌ"だとは思えないが、これまでの発言からしてキャスターの真名は明らかだ。
「…ジャンヌ。あなたがそこまでしてこの子の救命を望むなら…さァ、坊や。お喜びなさい。敬虔なる神の使いが君を助けてくれるそうだ」
「―ぅ、うああ、ぅあぁあぁ!!」
キャスターの大きな手に頭を掴まれていた少年は、その言葉を皮切りに悲鳴を上げてセイバーへと駆け寄りその体に抱きついた。
騎士王は柔らかい笑みで、大丈夫だ、と囁く。
「プリーストのマスターよ。この少年を連れて下がっていてください。―このまま進めば大きな城がある。切嗣なら、この少年を保護してくれる」
「…それはどうかしら。そんな粗悪を植え付けられた子供、あの男なら即座に殺すと思うけど。ソレこそ魔術の秘匿がどうとか言って」
その言葉に不機嫌そうに目を細めながらセイバーは少年へと向き直した。
―すると、少年の悲鳴はなにか痛みを堪えるものへと変化した。ひゅっ、と一瞬息を吸ってから、それを吐くことはなかった。
「なっ―」
セイバーの胸に抱きついていた少年は、もう悲鳴をあげることすらしないまま、その背が破られて行く。そこから発した、先ほどを襲った触手が、瞠目し動きを止めたセイバーの手や足、全身に絡みついた。
それを合図とするように、周りに散らばっていた肉片からも触手が伸びる。―どうにも、の趣味に合いそうにない。
それ相応の準備をしてくるといったはずですよ、そうにこやかに告げるキャスターを睨んだセイバーは、全身から目に見えるほど高濃度な魔力を放出させ、その触手を振り払った。
それだけセイバーならではのスキルを見せられても、未だ"ジャンヌ"と勘違いしているようだが―恋は盲目、とはこの場合違うのだろうか。
「もはや貴様と聖杯を競おうとは思わない。キャスター!私は、貴様を滅ぼすためだけに、剣をとる!」
そう息巻いて押し進む。見事な剣さばきで触手達を斬り払うセイバーだが、地面へ落とされた触手は、その断面から再生するどころか切り離されたごとに数が増えていった。
「何故だ。奴の魔力は底なしだと言うのか」
「いえ、ソレはないと思うわ。魔力を放出している感じは見られない。プリーストの言うとおりなら、彼は魔術師と言うより召喚士。召喚した時点でこの怪魔はキャスターから独立しているはずだから―これ自体に、プラナリアみたいな分割再生能力があるのだと思う」
「プラナ―なるほど。ならばまさかこれらの魔力の源は」
視線がキャスターの持つ本へと向かう。
それが貴様の宝具か、と確認する言葉に、キャスターは素直に答えた。盟友プレラーティの残した魔書により召喚の術を覚えた、らしい。
懐かしい、昔のようだと一人恍惚として語る男に、もセイバーも顔をしかめた。の予想が正しければ、そのジャンヌからしたら敵国の主でもある気がするのだが―きっとどうでもいいのだろう。
ひと通りキャスターの語りが収束して見えた頃、セイバーも痺れが切らしたのか特攻する。だが先程よりもあからさまに数が増えた触手たちは、一瞬足を取られたセイバーを瞬時に捕まえた。
「―逃げてください、あなたが近くにいては―」
何か切り札でも使う気なのだろうか、と考えている間も無く。何気なく自身を守っていたセイバーが窮地に陥っていることに気づくと、自身を取り巻き守護していた風の精になにか頼もうとする。
だが次の瞬間、赤と黄の二本の槍が、セイバーに絡みついたそれらを断ち切るようにして地面へ突き刺さった。
「無様だぞセイバー。いくら無力な者がいたとて、もっと魅せる剣でなければ騎士王の名が泣くではないか」
そんな美声と共に現れたのは、地面に刺さった槍の持ち主であるランサーだった。
さすがは伝説に残るほどの美丈夫。窮地に現れる英雄―としてなかなか様になっている。
「―何者だ!誰の許しを得てこの私の邪魔立てをするかァ!」
「それはこちらの台詞だ、外道!セイバーの首級は我が槍の勲。」
ランサーは黄槍をキャスターへ向け、セイバーは瞬時に乱れた呼吸を直しを連れながらその背についた。
挑発ともとれる発言に怒り狂うようなキャスター。「聖杯が私の願いを受け入れたのだ」「彼女の全てが私のものだ」―などとよくわからない発言を続けているが、その演説にやはりしびれを切らしたランサーが呆れるように言葉を返す。
「…なぁキャスターよ。別に俺は、貴様の恋路にまで口出しはせんよ。是が非でもセイバーを屈服させて奪いたいというのならやってみるがいいさ―ただし。このディルムッドを差し置いて、『片腕のみのセイバー』を討ち取ることだけは断じて、許さん!」
「ランサー…」
「勘違いするなよセイバー。今日の俺はキャスターを討ち取れとの命しか受けていない。ここは共闘としようではないか。プリーストのマスターよ、貴様のサーヴァントもいればもっと楽になるのだろうが」
「…生憎、私のサーヴァントはさらわれた子どもたちの救出に動いているの。それがどれだけ成功したかは知らないけど、私自身もキャスターやその褒賞には興味が無いのよ」
「単純に、貴様がいなければ攻撃のみに集中できるな、という意味だったのだが」
あら、と声を漏らす。だがはすぐに笑って―
「それこそお生憎様。こちらにもサーヴァントがいる以上命の危険があれば令呪を使ってでも呼び出すし、なくても自分の命は守れるわ。そこの心配はしなくて結構。けど私思うの―騎士って、近くに姫がいたほうが本領発揮できるものでしょう?その名誉と姫の命のために。私は姫じゃないけれど、今はそういう位置づけでいいんじゃないかしら」
「――…面白い」
「――なるほど、高飛車な姫がいたものだ」
二人の騎士はそれぞれの獲物を握り直す。
「断っておくが、私は片手だけでもあの軍勢を百は潰すぞ」
「それくらいできてもらわなくちゃね、騎士王様」
